HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 28 Nov 2011 02:22:13 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:放射線を教える フクシマを忘れずに:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

放射線を教える フクシマを忘れずに

 福島第一原発事故をきっかけに、学校でどう放射線を教えるかが問われている。正しい知識の欠落は偏見や差別の温床にもなりかねない。「フクシマ」の現実を思いつつ学ぶ授業を期待したい。

 ナガサキでの被爆体験の語り部を続けている横浜市の米田チヨノさん(85)は、心を痛めている。フクシマの人々が、冷たい仕打ちに遭っていると耳にしたからだ。

 子どもが転校先で「放射能がうつる」といじめられた。大人でさえ宿泊を拒まれたり、診察を断られたりと、やりきれない出来事が相次いだ。

 米田さん自身のつらい記憶と重なった。かつて近所におすそ分けしたレンコンが「原爆がうつる」と捨てられたり、丈夫な子を産めるのかと先方に不安がられ、娘の縁談が壊れたりした。

 「放射能を知らないから心配になる。きちんと教えてほしい」と米田さんは言う。被爆者としての切実な思いが伝わってくる。

 唯一の被爆国なのに、原発の有用性や安全性ばかりを強調する教育が進められてきた。一方で、世論が大きく割れるようなテーマゆえに、学校での突っ込んだ授業は敬遠されがちだった。

 子どもが原子力や放射能と真正面から向き合う機会は乏しかった。フクシマの厳しい現実に直面し、ようやくその過ちに社会全体が気づいた。それが実情だろう。

 中学校の理科では来春から放射線の授業が本格化する。医療や農工業への活用という主に利点を学ぶ。原発事故を受けて理科や社会などの教科書の記述を見直す動きも出ている。

 文部科学省は小中高生向けの副読本を作った。放射線の効用と併せ、被曝(ひばく)による人体への影響や身を守る方法を紹介している。

 けれども、フクシマの惨状や原発の限界といった目の前の生々しい問題はほとんど取り上げられていない。これでは地元の先生や親、子どもはどう感じるだろう。

 日本環境教育学会は授業案を提供している。故郷を追われた人々の苦悩や、食品や土壌の放射能汚染の広がりを見つめ、偏見や差別、将来のエネルギー政策を考える取っかかりを与える。

 担当した小学校の先生は「抽象的な知識を頭に入れるだけでは意味がない。現実に対応し、未来を描く力を育みたい」と言う。

 フクシマが問いかけるものと向き合いつつ原子力や放射能を学ぶ。乾いた科学の知識に血を通わせるような営みが大切だ。

 

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