HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 27 Nov 2011 22:21:40 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:日米地位協定 なぜ改定に踏み込まぬ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

日米地位協定 なぜ改定に踏み込まぬ

 日本で起きた犯罪を、なぜ日本の司法が裁けないのだろう。かつての治外法権を想起させる日米地位協定の運用が一部見直された。一歩前進だが、まだ不十分だ。なぜ改定に踏み込まないのか。

 運用が見直されたのは、在日米軍に勤める民間米国人(軍属)による公務中の犯罪についてだ。

 米側が軍属を刑事裁判にかけない場合、日本側は「裁判権を行使したい」と米側に要請できるようになった。被害者が死亡したり、重い障害が残った場合、米側は「日本側の要請に好意的考慮を払う」という。

 地位協定では公務中の軍属の裁判権は米側にあるが、米側は二〇〇六年までその裁判権を日本側に事実上委ねていた。同年九月以降は「公務証明」を発行して裁判権を主張し、日本側は「裁判権がない」として不起訴にしてきた。

 法務省の資料によると、公務中が理由の不起訴は六十二件。しかし、米側が軍法会議にかけた例はなく、懲戒処分が三十五件、処分なしは二十七件に上る。

 今回、運用見直しのきっかけとなった沖縄県沖縄市の交通死亡事故でも、米軍属は五年間の運転禁止処分にとどまっている。

 日本人が同じ事故を起こせば軽い処分では済まない。運用見直しで、日米どちらにも裁かれないという「法の空白」が埋められたことは前進と受け止めたい。

 ただ小さな前進にすぎない。日本側が公務中の軍属の犯罪を裁判できるのは米側が裁判にかけず、かつ米側が同意した場合のみだ。日本側が裁判できるかどうかは米側の「好意的考慮」にかかる。

 米軍人の公務中の犯罪は、引き続き日本側に裁く権利がない。

 また、米軍人・軍属の身柄は現行犯を除き、起訴まで米側が拘束する。一九九五年の少女暴行事件を受けて、殺人、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪では日本側に起訴前の身柄引き渡しができるようになったが、米側が拒否する事例もある。

 この状況を正すには地位協定の改定が必要だ。民主党は〇九年衆院選マニフェストで「改定を提起する」と約束した。米側の壁が厚いことは理解するが、不平等な状態を放置し、提起すらしないのは敗北主義にほかならない。

 国家主権たる裁判権の回復と、沖縄県民の基地負担軽減とは別問題である。野田内閣が今回の運用見直しをてこに、米軍普天間飛行場の「県内移設」受け入れを迫ろうとするのなら、厳に慎むべきだとくぎを刺しておきたい。

 

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