政府・行政刷新会議は提言型政策仕分けで、年金改革として本来より高い給付が続く問題の是正を求めた。社会保障制度維持には給付の抑制も避けて通れないが、民主党内議論は迷走が続いている。
二十三日の社会保障分野の政策仕分けで、年金改革についてやり玉に挙がったのは、過去の特例措置で本来より2・5%高くなっている給付の是正だ。
年金額は現役世代の賃金や物価の上下に合わせ増減させるが、二〇〇〇〜〇二年度に物価が下がったのに減額しなかった。時の自自公政権が高齢者の生活に配慮したためだ。
政策仕分けの提言は是正を明確に求め、一二年度から三年かけて実現するように期限も迫った。それに呼応するように小宮山洋子厚生労働相も実現の意向を示した。
減額は完全実施される三年目で、国民年金(基礎年金)満額の月約六万六千円の受給者で月約千六百円になる。
コンビニ弁当が五百円を切っている時代だ。年金を主な収入として暮らす高齢者には、無視できないだろう。既に今の年金額で生活設計をしていることを考えれば、生活を支える配慮は要る。
ただ、このまま放置していいわけでもない。本年度までの十二年間で、特例措置により本来より計約七兆円給付が多い状態だ。
社会保障制度を維持するためには、給付の抑制や負担の増加は避けて通れない。年金改革を進めるには、まず本来ルールに戻すことを優先すべきなのは理解できる。
政策仕分けの提言は、給付抑制策の導入に及び腰で迷走している民主党への外圧だろう。
民主党は十二月に、社会保障改革の具体案を盛り込んだ一体改革大綱を決める予定だが、国民に負担を求める項目には拒否感が強い。特例給付の是正や、現役世代の負担増となる高所得者の厚生年金保険料アップは消極的だ。六十八歳からの年金支給開始年齢引き上げは議論を先送りした。
ねじれ国会で関連法案成立に欠かせない野党との協力も見えない。
全世代で改革の痛みを分かち合わなければ、持続する社会保障制度は実現しない。党自身で決められず、政策仕分けという“外部装置”に頼らないと決められないのなら、政府・与党として無責任である。
国民の不安を取り除き、信頼できる社会保障制度にするために、どんな給付抑制や負担増が必要なのか、逃げずに提示すべきだ。
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