気候変動枠組み条約第十七回締約国会議(COP17)が二十八日から、南アフリカのダーバンで開かれる。京都議定書の期限切れまであと一年。国際ルールの空白だけは、何としても避けないと。
温室効果ガスの削減ルールを定めるポスト京都の枠組みは、二〇〇九年のCOP15で決める約束だった。ところが、京都議定書で削減義務を負う先進国と、次期枠組みで新たに義務を負うことを避けたい途上国との溝は埋まらず、日程的には期限切れ寸前の今も、新たな枠組みの影さえ見えない。
昨年のCOP16で決まったカンクン合意では、先進国から途上国への温暖化対策資金や技術移転の仕組みづくりで、わずかな前進があった。しかし、今年に入って、温暖化問題を取り巻く情勢は、内外ともに大きく変化した。
大震災の復興に追われる日本には「全主要国の参加を条件に二〇年までに一九九〇年比25%削減する」との国際公約に、取り組む体制をつくる余裕がない。
排出量世界一位の中国、三位のインド、開催国南アなど新興国(BASIC)は、京都議定書の単純延長を強く主張する。議定書による削減義務国の総排出量は全体の27%にすぎず、これでは効果がないとして、日本はそれに真っ向反対。議定書から離脱した排出量二位の米国は、オバマ大統領が来年の大統領選を控えて低支持率にあえぎ、経済に影響が出るような環境政策を打ち出せない。
金融危機の不安を抱える欧州は、かつてのようなリーダーシップを発揮できない。新枠組みの採択はすでに不可能視されている。このままでは、削減ルールの空白期間ができかねない。
日本政府は、枠組み不在の「移行期間」は、各国が自主目標を定めて努力するよう提案している。だが、その程度の取り決めで、例えば排出権を他国から買ってまで“努力”する国があるだろうか。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今月開いた総会で、温暖化の影響で極端な異常気象の危険性が高まったと、警告を発した。私たちはその恐れを強く感じているはずだ。
COP17で日本が発言力を維持するためには、「25%削減」の看板を、まだ下ろすべきではない。
効果に乏しい単純延長には反対だ。だからと言って空白期間はつくれない。せめて新枠組みの合意期限と段取りを決めておかないと、地球の未来が危うくなる。
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