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2011年11月25日(金)付

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年金の減額―本来の水準に戻そう

年金が減るという話は、お年寄りにとってつらい。だが、ここは子どもや孫への影響に思いをめぐらしたい。小宮山厚生労働相が年金の支給額の引き下げを検討する考えを示した。今年度[記事全文]

NHKの明日―公共放送の姿論じよう

いまテレビ、とりわけ公共放送であるNHKが社会で果たすべき役割とは何だろうか。こう考えるのは、NHKの来年度からの3カ年経営計画が先月決まり、今月になって決定までの経営[記事全文]

年金の減額―本来の水準に戻そう

 年金が減るという話は、お年寄りにとってつらい。だが、ここは子どもや孫への影響に思いをめぐらしたい。

 小宮山厚生労働相が年金の支給額の引き下げを検討する考えを示した。今年度の年金は本来より2.5%分多い。それを段階的に戻そうというのだ。

 問題の始まりは自民党と公明党が政権の座にあった99年だ。

 この年、消費者物価が少し下がった。それに応じて、翌00年度の年金を自動的に下げるのが本来のルールだった。

 ところが、年金を減らせば、景気をさらに悪くするといった理由から、年金額を据え置く特例をつくった。

 特例は02年度の年金まで3年連続で適用された。選挙で年金生活者の反発を買いたくないという配慮もあったようだ。

 据え置きにあたっては毎回、法案が出され、国会は全会一致で可決してきた。据え置いた分は、物価が上がったときに、年金額を引き上げないという方法で解消するはずだった。

 ところが、物価が下がるデフレ傾向が続き、実際の年金額と「本来の水準」のギャップは埋まらないままだ。

 政府の政策仕分けでは「累計7兆円規模の年金のもらいすぎがある」と指摘され、その解消が提言された。

 私たちも、解消を急ぐべきだと考える。民主党内から反発の声が出ているが、乗りこえなければいけない。そうしないと将来世代にツケが回る。

 少子化で保険料を払う現役世代は減っている。一方で、長生きする人が多くなり、年金の支給額も増えている。

 このままでは現役世代の負担が重くなりすぎるので、保険料の上昇は2017年度に歯止めがかかる。年金を払うために使うパイの大きさに、一定の枠がはまることになる。

 さらに、物価上昇時には「マクロ経済スライド」という仕組みが設けてある。現役世代の減り方や寿命の延びなどに応じて、年金額を抑える制度だ。

 しかし、いまの年金を「本来の水準」にまで下げてギャップをなくしたうえで、物価がある程度上がらないと、この仕組みは動かない。この決まりを見直して、物価が下がった時にも発動できるようにしないと、将来世代の年金がさらに減ってしまうことになる。

 年金にしか頼れないお年寄りの不安はよくわかる。だが、いまの子や孫世代も、将来の年金に大きな不安を抱いている。お互いを思いやる姿勢で、この問題を考えたい。

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NHKの明日―公共放送の姿論じよう

 いまテレビ、とりわけ公共放送であるNHKが社会で果たすべき役割とは何だろうか。

 こう考えるのは、NHKの来年度からの3カ年経営計画が先月決まり、今月になって決定までの経営委員会の議事録が公表されたからだ。

 経営委では営業経費や建設費が高すぎるという指摘があり、人件費についても語られた。

 4月に経営委員長になった数土(すど)文夫氏も「合理化、コスト削減意識が本当に感じられない」と驚きを話している。来年秋から、受信料を口座・クレジット払いで1世帯あたり月120円下げることも決まった。

 値下げで収入は減るが、安定した財源があることに変わりはない。経済状況やメディア環境が激変する時代に、極めて恵まれているという自覚を持ってほしい。

 NHKは視聴者からの受信料で運営される。だから経費削減とともに、何者にも左右されずに視聴者のために、正確な報道と良質な番組づくりが求められる。受信料値下げが語られた根っこに、不祥事の連続があったことを忘れてはならない。

 今回、執行部による計画案や経営委の議論の様子は秘密にされ、決定した後に初めて公表された。過程の透明さも大切で、やり方を見直すべきだろう。

 震災でテレビの力があらためて注目された。地上デジタル放送への移行もできた。一方で若者のテレビ離れが進み、インターネットなどの通信を娯楽や情報の源とする人が増えている。

 次期経営計画には、公共、信頼といった立派な言葉が並んでいるが、経営委では値下げの議論に時間が費やされ、新時代の「公共放送らしさ」を深く話し合ったとは言いがたい。

 「NHKスペシャル」など評価の高い番組がある一方、情報番組のワイドショー化など、民放化も指摘される。

 放送と通信の役割の整理は大きな課題だ。英国放送協会(BBC)などで実現しているネットでの同時送信は、放送法に規定がなく民放も反対している。けれどネットがこれだけ普及した今、国際放送や災害放送を補う効果もあり、公共性の意味から広く議論する時にきている。

 ある委員は、経営計画とは別に5年、10年後を論じるべきだと指摘している。ならば経営委や放送番組審議会と連動して、将来像を語り、方向づけをする場を設けることも一案だ。

 その際、有識者に加え、視聴者もぜひ交えるべきだ。その丁々発止の様子を、番組にするぐらいの姿勢を見せてほしい。

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