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宇宙飛行士には、気立ての良さそうな人が多い。歴代の日本人を思い浮かべても、少なくともカメラの前ではなべて上機嫌だった。まあ、それしきの平常心は必携だろうし、憧れた仕事のただ中にいる喜びもあろう▼宇宙滞在連続167日の「日本記録」を土産に、国際宇宙ステーションから戻った古川聡さん(47)も笑みを絶やさなかった。降りたカザフスタンの雪原は零下20度。無重力で弱った筋肉を椅子に支えられての、まん丸の笑顔である▼初の宇宙でお疲れだろうに、記者の質問にも律義に、飾らない答えが返る。「重力を本当に感じます。重力のお陰で座れますから」「冷たくて新鮮な空気。息ができる空気が周りにたくさんあるのは素晴らしい」▼医師の古川さんは、宇宙暮らしの影響などを体を張って調べた。交代要員の遅れで、図らずも野口聡一さん(46)の記録163日を抜くことになったが、その野口さんがこれまたニコニコ顔で出迎えた▼山崎直子さん(40)は、帰還後の著書『夢をつなぐ』(角川書店)に「どんな存在も、決してムダというものはなく、世の中のすべてのものには意味がある」と記す。「どんなに悲惨な災害が人々を襲おうとも、飢餓や貧困、差別や格差が厳然としてあろうとも、それでも生きている世界は美しい」と▼飛行士たちが日本語で伝える天空体験の数々は、等しく、地球と人間の尊さ、愛(いと)おしさを語る。「好人物」に備わる優しさの何割かは、どうやら宇宙から持ち帰ったものらしい。