米ロが初参加の東アジアサミット(EAS)は安保や政治が焦点となった。日本はアジアに軸足を移した米国や東南アジア諸国と連携を強め、南シナ海問題の平和的解決などで役割を果たすべきだ。
二〇〇五年にマレーシアで産声をあげたEASは、六回目を迎えた。これまで経済や地域協力が主要議題だったが、今回は政治や安全保障が焦点の会議へと転換した。特に、地域の不安定要因となっていた南シナ海の領有権問題を念頭に、国際的な海洋法が「極めて重要な規範」とする宣言を採択した意義は大きい。
米国は豪州北部の駐留米軍拡大を決め、アジア太平洋地域を安保政策の最重点とする新戦略を打ち出した。対中けん制を狙ってアジアへ軸足を移したといえる。この機に、日本は米国や東南アジア諸国連合(ASEAN)との多国間連携をさらに深め、領有権問題で法的拘束力のある「行動規範」の策定に向け、ASEANと中国の対話を後押ししてほしい。
今後はEASを地域安全保障の中核とすべきであるが、中国に過度な圧力や懸念を与えない配慮も必要だろう。米側によると、EAS直前に、中国の要請で急きょ米中首脳が会談した。中国が米主導の包囲網に警戒感を示す一方、EASの場で鋭い米中対立を避けたいとのシグナルでもあった。
首脳会談で、中国は「核心的利益」とする南シナ海問題で、関係国以外の介入を強く拒否したという。だが、行動規範の策定を進めることには合意しており、米ロ初参加のEASで南シナ海問題を主議題に論議したのは成果だ。米国主導で、一足飛びに「海洋の安全保障」について国際ルールづくりを求めるのは得策でもない。
米国の新安保政策に加え、インドが南シナ海問題でASEAN支持を表明した。封じ込め政策として中国が硬化せぬよう、日本が果たせる役割もあろう。野田佳彦首相が来月訪中する。来年は日中国交正常化四十周年の節目であり、戦略的互恵関係を深めてほしい。
EASは、東アジアで広域的な自由貿易圏を形成する方針を確認した。米主導の環太平洋連携協定(TPP)と並び、経済統合の両輪となろう。中国はTPPへの対抗意識を見せるが、中国抜きで将来のアジア太平洋の経済統合の枠組みは考えにくい。台頭する中国を国際的な経済体制に組み入れるプロセスでも、日本は橋渡し役になれるよう知恵を絞ってほしい。
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