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天声人語

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2011年11月22日(火)付

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 風のように流れ去る時間があれば、泥のごとく滞る歳月もある。被害者やご遺族の多くは、もがく思いでこの日を迎えたことだろう。摘発から16年、オウム真理教事件の裁判がようやく終結した▼死者29人、重軽症者6千人以上。有罪188人のうち、麻原彰晃こと松本智津夫元代表(56)ら13人が、極刑を告げられた。「捜査手法を尽くし、組織テロを鎮圧した戦争でした」。東京地検で捜査を指揮した神垣清水(せいすい)氏が振り返る▼片や松本死刑囚の一審弁護団長だった渡辺脩(おさむ)氏は、「なぜ事件が起きたのかという問題にフタをし、有罪にするための儀式になった」と悔やむ。高学歴が多い教団幹部を誤らせたものは何か。教祖は真相を語らぬままだ▼「オウムは不安を食って大きくなった。第二第三が出ないとも限らない」と、評論家の佐高信(さたか・まこと)さんがテレビで語っていた。教義を継ぐ団体は活動を続けているし、世は往時にもまして、凡百の新興宗教が消化しきれないほどの不安に満ちる▼フルに働いても年収200万円以下の人が1千万を超え、生活保護の受給者は、制度ができた戦後期を上回るという。皆が貧しかった60年前は、旧秩序の残骸が「一発逆転」のにおいを発していた。今はそれもなく、若者の希望はかすれがちだ▼生きにくい時代には、色んな教えが「輝く未来」を競い、悶々(もんもん)と暮らす人々を誘う。よこしまな扇動家の仮面は、むろん宗教家とは限らない。こんな年だからこそ、頼るに足る、本物のきずなを見抜きたい。

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