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2011年11月21日(月)付

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社会保障改革―優先順位をはっきりと

いったい、どうなっているのか――。そんな疑問を抱いている人も多いだろう。社会保障と税の一体改革のことだ。今年6月、菅前首相のもとでまとめた案は、2010年代半ばまでに消[記事全文]

動くミャンマー―アジアに民主化の風を

ミャンマー(ビルマ)をめぐる情勢が大きく動いている。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、同国の求めに応じて14年の議長国就任を認めた。米国はクリン[記事全文]

社会保障改革―優先順位をはっきりと

 いったい、どうなっているのか――。そんな疑問を抱いている人も多いだろう。社会保障と税の一体改革のことだ。

 今年6月、菅前首相のもとでまとめた案は、2010年代半ばまでに消費税を10%に引き上げる一方、年金や医療・介護、子育て支援の充実や効率化を進める計画を描いた。

 ところが、厚生労働省の審議会や民主党の調査会で議論していく過程で、全体像が見えにくくなった。

 本来、中長期的な検討課題であるべき「年金の支給開始年齢の引き上げ」が、まるで明日にでも決まるような印象を世間に与えた影響が大きい。

 確かに、6月の案に盛られた項目の一つではある。だが、他にもっと議論を急ぐべきものはいくらでもある。

 たとえば、介護職員の給料に国費で1万5千円上乗せする今の制度は今年度末で期限が切れる。何もしないと給料が下がってしまう。来年度予算でどう手当てするのか。

 子ども・子育て支援は、一体改革の目玉である。年7千億円をかける充実策の中身がまとまらなければ、消費税を引き上げる説明がつかないだろう。低所得者の多い国民健康保険への財政支援も優先度が高い。

 すでに議論の蓄積がある項目は、それを生かすのが早道だ。パート労働者が、正社員の厚生年金や健康保険に入れるようにする。サラリーマンと公務員らの年金を一元化する。この二つは、自公政権下でも法案が提出された経緯がある。

 「これを片付けないと次に進めない」ものもある。

 いま支給されている年金は本来水準より2.5%高い。00〜02年度、物価は下落したのに支給額を据え置いたためだ。これを解消しないと、デフレ下で長期的に年金財政をバランスさせる改革の議論に入れない。

 いずれも、簡単ではない。厚労省が組織をあげて取り組むような課題がいくつもある。

 心配なのは民主党内の議論の行方だ。一例は「低所得者への年金加算」である。聞こえはよいが、保険料を全額払い続けてきた人との公平性を損なわずに制度設計ができるのか。

 年金の引き下げや保険料の引き上げなど痛みを伴う措置には手をつけず、給付の充実だけつまみ食いするなら、責任政党とはいえない。

 政府・与党は、消費税の引き上げが納得されるような社会保障改革の全体像と、優先順位がわかる工程表を示すべきだ。残された時間は少ない。

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動くミャンマー―アジアに民主化の風を

 ミャンマー(ビルマ)をめぐる情勢が大きく動いている。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は、同国の求めに応じて14年の議長国就任を認めた。

 米国はクリントン国務長官を派遣する。野田首相は途上国援助(ODA)再開を表明した。

 民主化勢力の国民民主連盟は政党登録して政治に再び参加することを決めた。書記長アウン・サン・スー・チーさんの補欠選挙立候補が取りざたされる。

 昨年、20年ぶりに総選挙を実施して、軍事独裁から「民政移管」を宣言した新政権が7月以降、民主化勢力との対話やメディア、集会規制の緩和、住民が反対するダム建設の凍結といった施策を相次いで打ち出した。

 国際社会はこうした動きに一定の評価を与え、民主化勢力も新政権の誘いに乗った形だ。

 議長国は1年交代の輪番制でミャンマーは06年が順番だった。ところが軍事政権による人権弾圧に反発する国々の圧力で辞退に追い込まれていた。

 議長国になれば、軍政が強引に遷都した新首都ネピドーに、経済制裁を科す米国の大統領ら主要国の首脳が東アジアサミットなどで集うことになる。

 多くの関連会議があり、対話と調整が重ねられる。外国報道機関を拒むこともできない。国をひらく意味で悪くはない。

 ASEANはこれまで「内政不干渉」を盾に軍政に積極的な働きかけをしてこなかった。

 議長国就任が決まったから国内融和はもう必要ないといった対応を新政権にとらせないよう、ASEANは民主化の定着を連帯保証する立場にある。

 民主化が進んだと言っても、10月の恩赦で釈放された政治犯は約200人に過ぎず、500人以上がまだ牢獄につながれている。対立が続く少数民族との和解交渉は始まってもいない。

 なにより国会議席の8割は軍人と元軍人が占め、軍制定の憲法を事実上改定できない仕組みはそのままだ。軍が国家を支配する構造に変化がないことに、留意を続ける必要がある。

 15年の経済統合をめざすASEANにとって、経済や財政に透明性がなく最貧国にとどまるミャンマーは重荷でもあった。

 ASEANには他にもベトナム、ラオスといった一党独裁を続ける国や人権問題を指摘される国が多い。今回の決定が他の加盟国も含めた全体の民主化につながる契機になって欲しい。

 日本は援助が民主化のさらなる促進につながるよう進捗(しんちょく)を見守らなければならない。それが人権を踏みにじられてきた人々や納税者に対する責任である。

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