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2011年11月20日(日)付

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政治を鍛える 選挙制度―参院を全国11の大選挙区に

 選挙制度を改めよう、という議論が衆参両院で動き出している。司法から「違憲状態」だと指弾された「一票の格差」の是正に背中を押された格好だ。

 衆院では、民主党が格差をただした後に、抜本改革にも取り組みたい考えを示した。民主、自民両党などの一部議員は、小選挙区制を見直す議員連盟を立ちあげた。

 参院でも、すでに主要各党や故西岡武夫議長らの具体案が並んでいる。

■衆参の一体改革こそ

 私たちも選挙制度を根幹から見直すべきだと考える。

 その際の鉄則は、衆院と参院を一体的に改めることだ。

 両院の役割を再定義して、それにふさわしい議員の選び方を考えていくのだ。

 衆院は首相選びで参院に優越し、解散の制度もあるので、その時々の民意を反映させて政権党を選ぶことに主眼を置く。

 だからこそ参院は、時間をかけた政策論争に徹する。そのためには、政党よりも人物を選ぶ制度がふさわしい。

 この視点で、まず衆院の小選挙区比例代表並立制を見る。

 批判は山ほどある。小選挙区での過半数の支持を求めて2大政党化し、政策が似通い、多様な民意をすくえない。死票が多く、票差以上に議席数が開く。狭い選挙区なので議員も小型化し、質が劣化した。

 有権者にすれば、政策的にも人材面でも選択肢が限られる。小選挙区の落選者が比例で当選する違和感もぬぐえない。

 一方で、政権交代ができた功績は大きい。有権者が政権を選ぶ民主主義のサイクルも、小選挙区制とともに回りだした。

 功罪の検証は難しい。

 たとえば、議員の劣化が小選挙区のせいなら、なぜ英国ではそんな指摘がないのか。政策が似るより、政党内がばらばらな方が問題ではないのか。政党組織や人材が制度改正に見合う進化をしていないのが、混乱の主因ではないのか。

 こうした疑問をまず、選挙制度審議会など第三者機関で検証すべきだ。比例代表を中心にする、中選挙区制に戻す、完全小選挙区制にする、現状のままでいいといった議論は、検証の結果を見ながら、政権党を選ぶのに適した制度をめざしてすすめるのが筋だろう。

 次に参院を見ると、選挙区と比例代表の組み合わせであり、衆院とよく似ている。

 2人区は民主と自民のほぼ指定席になり、勝敗は衆院小選挙区のように1人を選ぶ29カ所の1人区にかかる。2大政党が1人区で雌雄を決する構図も、衆院と同じなのだ。

■100人の賢人の府

 そんな参院が衆院並みの権限を持つから、参院選が政権に打撃を与え、政治を停滞させることにもなる。だから前回、衆院の優越を強める策を唱えた。

 それに続き、今回は選挙制度改革の一案を提言する。政治を機能させるために、制度改正は焦眉(しょうび)の急であり、参院については2013年の選挙から実施すべきだと考えている。

 政党が候補者を擁立する現状のもとで、有権者が政党より個々の人物の見識を比べて選ぶには、どんな制度がいいか。

 一つの答えは、全国を複数のブロックに分けた大選挙区制にして、比例区をなくすことだ。

 大きな選挙区にして定数を増やせば、同じ党から複数の候補者が立つので、有権者の選択肢は広がる。衆院比例区と同じ11ブロックにすれば、衆参同日選での混乱も避けられる。

 現行の定数242なら、各ブロックの3年ごとの改選数は、4〜19程度になる。思い切って「100人の賢人の府」にすれば、2〜8になりそうだ。

■16歳から投票所に

 選挙制度の改正にあわせて、選挙権年齢を引き下げよう。国政は18歳から、地方選では16歳とすることを提案する。

 09年の衆院選でも若者の投票率は低かった。20〜24歳の約47%に対し、65〜69歳は85%余りで、2倍近い開きがあった。

 これからの政治の大きなテーマは、社会保障の負担や膨大な負債の返済を、世代間でどう分かち合うかだ。若い世代の声をもっと政治に届けた方がいい。

 義務教育を終えた16歳から、暮らしにかかわる地域の問題と向き合う地方選に参画する。長野県小諸市のように「高校を卒業して故郷を離れる前に」と、16歳以上の市民に住民投票への参加を認めた自治体もある。

 友だちと政治を語り合い、選挙も経験すれば、18歳からの国政選も自然なことだ。

 「最近の若い者は幼く、判断力がない」という批判もあるだろう。だが、選挙権はみずから政治を考える訓練を促す。

 戦前の男子普通選挙や、戦後の婦人参政権のように、選挙権の拡大は政治に新しい風を吹き込む。いまの閉塞(へいそく)感を打ち破るきっかけになるに違いない。

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