HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 17 Nov 2011 03:21:05 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:裁判員制度 合憲でも課題は残る:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

裁判員制度 合憲でも課題は残る

 裁判員制度は憲法違反かどうかが争点の裁判で、最高裁は「合憲」と判断した。二年半を経過した新制度は定着しつつある一方で、死刑の在り方や厳しい守秘義務など克服すべき課題は残る。

 大日本帝国憲法では「裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権」と書かれたが、日本国憲法第三七条では「裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」となった。「裁判官」ではなく「裁判所」と変わったのだ。

 新憲法と同時に施行された裁判所法第三条は「陪審の制度を設けることを妨げない」とも明記した。新憲法は刑事裁判を市民参加で行うことを想定していたと考えるのが自然だろう。陪審制とは形は異なるが、裁判員制度は新憲法の理念に沿っているともいえる。

 今回の裁判は覚せい剤密輸の事件だが、同制度自体の違憲性を争った。弁護側は「くじで選ばれた裁判官以外の者が、裁判官と対等の権利を持って裁判に関与するのは違憲」などと主張したのだ。

 最高裁は新憲法制定時の状況を踏まえつつ、「国民の司法参加が禁じられていると解すべき理由はない」と合憲判断をした。同制度では法令の解釈などは裁判官が行う。評決も単なる多数決ではなく、多数意見の中に必ず裁判官が加わっていることが必要だ。

 それらを根拠に「被告人の権利保護の配慮もされている」「刑事裁判の諸原則の保障は裁判官の判断に委ねられている」などと合憲理由を説明した。

 立法段階から一部の学者や弁護士などで根強かった「違憲論」の議論は、これで一応の決着をみたといえよう。最高裁の裁判員経験者へのアンケート調査でも95%以上が「よい経験」と回答し、制度は定着してきたと評価できる。

 裁判員制度では一般市民も死刑問題と向き合う。絞首刑が残虐な刑罰にあたるかがテーマとなった裁判では、執行に立ち会った元検事が「むごいと思った」と証言した。死刑の在り方の議論に一石を投じることになるだろう。

 同一の被告が複数の事件を起こした場合、事件ごとに裁判員が選ばれる「区分審理」になることがある。量刑は最後に判決を出す法廷で決まる。審理に加わらなかった裁判員が量刑を判断する仕組みは、矛盾をはらんでいる。

 過重な守秘義務なども問題だ。もっと裁判員の経験を社会で共有できるように改善したらどうか。市民感覚を生かした刑事裁判がさらに成熟するのを期待する。

 

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