HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19885 Content-Type: text/html ETag: "3feabc-4842-340d0580" Cache-Control: max-age=1 Expires: Thu, 17 Nov 2011 03:21:07 GMT Date: Thu, 17 Nov 2011 03:21:06 GMT Connection: close
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どうかすると小さな絵に見えるから、漢字は面白い。象形文字ではないが、偶然の妙のような例がある。百の能書きに勝る川柳を引こう。〈膝(ひざ)抱けば哀という字に似てしまう〉矢本大雪(だいせつ)▼先月の朝日歌壇に、広島市の小田優子さんの一首が載った。〈「かなしい顔している字」だと言いながら幼(おさな)は《谷》と半紙に書きたり〉。なるほど、下がった眉の下に横開きの口。べそをかいているように見える▼ほどなく、この漢字を姓に持つ読者から「返歌」が寄せられた。〈書きようで笑顔にもなる《谷》の字を嫁ぎ来てより親しみて書く〉谷チイ子、〈幾度(いくたび)も書いているけど谷の字は大口あけて笑っているよ〉石谷茉莉。泣いて笑って、どちらもうなずける▼永田和宏さんの選者評には、「この歌壇は一種のソサエティでもある。時にこういうやり取りも楽しい」とあった。週初めに現れる紙上の小宇宙は、歌人俳人の技と遊び心に満ちている▼過日の小欄で、歌壇の常連となった富山市の松田梨子(りこ)さん(13)、わこさん(10)姉妹を、「青い閃(ひらめ)きに打たれる心地よさ」と紹介した。同じ思いで成長を見守る人は多い。〈梨子ちゃんとわこちゃんのいる言の葉の遊園地へ行く月曜日には〉甲斐みどり▼出入り自由で年齢制限なし、感性を解き放つ遊び場である。遊んで学ぶこともあろう。遊園地のスケールには遠く及ばないが、当コラムも言葉と戯れていただく場である。森羅万象について、ここだけの表現があふれる「おもちゃ箱」でありたい。