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11月16日付 編集手帳

 俳人芭蕉は門人に語ったという。「一世のうち秀逸の三五あらん人は作者(なり)、十句に及ぶ人は名人也」と◆〈青蛙(あおがえる)おのれもペンキぬりたてか〉〈(うさぎ)も片耳垂るる大暑かな〉〈水涕(みずはな)や鼻の先だけ暮れ残る〉〈初秋(はつあき)(いなご)つかめば柔かき〉…。素人の悲しさで、秀逸の句を見分ける鑑識眼は持ち合わせていないが、芥川龍之介といえば幾つかの句が浮かぶ◆35歳で世を去ったその人にいま少しの生が許されたならば、俳句でも「名人」になっていただろう。芥川が高浜虚子に俳句指導を請うた書簡が兵庫県芦屋市の「虚子記念文学館」で見つかり、展示が始まった◆書簡は1919年(大正8年)6月27日付で、自作の9句に講評を依頼している。端正で、哀調を帯びた一句。〈篠懸(すずかけ)の花さく下に珈琲店(カッフェ)かな〉。芥川文学の愛好家ならずとも、肉筆を通して若き文豪の息づかいに触れるのは、興味深いことだろう◆「あの代表句を忘れていませんか?」という声が聞こえてきそうである。〈木がらしや目刺にのこる海のいろ〉。きのう、北海道の各地から初雪の便りが届いた。海のいろが食卓を彩る季節も、もうすぐである。

2011年11月16日01時13分  読売新聞)

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