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2011年11月16日(水)付

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冬の節電―家庭の協力得る努力を

冬型の気圧配置が強まり、天気予報の欄では北国に雪マークがつきはじめた。発電所の被害が大きく、復旧が進まない東北電力では、暖房需要の増加から再び自前での電力供給が難しくな[記事全文]

ブータン国王―桃源郷の挑戦見守ろう

ブータンのワンチュク国王が国賓として来日した。31歳の国王は先月、21歳のペマ王妃と結婚したばかり。新婚旅行を兼ねた初めての訪問を歓迎したい。九州よりやや広い国土に約7[記事全文]

冬の節電―家庭の協力得る努力を

 冬型の気圧配置が強まり、天気予報の欄では北国に雪マークがつきはじめた。

 発電所の被害が大きく、復旧が進まない東北電力では、暖房需要の増加から再び自前での電力供給が難しくなり、15日から東京電力など他社による電力融通を受けることになった。

 東北電力以外でも、関西、九州の2社で需給が切迫するとみられている。いずれも原発への依存度が高い地域だ。関西は昨冬比で10%、九州は同5%の節電目標を設け、需要家に節電をお願いする。

 そのほかの地域でも、余裕はあまりない。定期点検に入った原発の再稼働に時間を要している中で、電力不足問題は全国的な問題に広がった。

 冬の場合、朝と夕方の2回、電力消費の山がくる。午後の気温が高い時間にピークがある夏とは違って、工場の操業調整や交通機関の間引き運行による節電効果を引き出しにくい。

 ビルなどの業務用や家庭用の電力で、いかに空調や照明、家電の使用を控えるかがピークカットにとって重要になる。

 ところが、需要の3分の1を占める家庭には、電力消費を時間別に測れるスマートメーターが普及していない。自分たちの電気の使い方や、具体的にどうすれば全体の省エネに役立つかが見えなければ、節電に協力する意欲もわきにくいだろう。

 政府が今月初め発表した「今冬の電力需給対策」では、電気カーペットやファンヒーターなど暖房器具別の消費電力を部屋の形状とともに比較したり、おもにエアコンを使う家庭とガス・石油ストーブを使う家庭とに分けて、節電効果を添えたメニューを提示したりしている。

 電力会社は、責務としてさらにていねいに情報を提供すべきだ。とりわけ関西電力は、一部とはいえスマートメーターを約95万世帯に設置している。域内全体を把握するのは無理でも、これまでのサンプル調査や実証実験などを通じて、電力消費の傾向を示すデータを積極的に公開し、業界全体で節電に活用する術を考えるべきだ。

 電力需給は、来夏もギリギリの状況が続く。政府は26項目を重点課題とする規制改革プランをつくり、家庭が太陽光発電や蓄電池を購入しやすくしたり、断熱効果が強まるよう住宅の省エネ基準の見直しを急いだりする構えだ。

 プランには、送電網の広域運用などこれまで電力会社が消極的だった内容も含まれるが、スピード感をもって実行に移してほしい。

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ブータン国王―桃源郷の挑戦見守ろう

 ブータンのワンチュク国王が国賓として来日した。31歳の国王は先月、21歳のペマ王妃と結婚したばかり。新婚旅行を兼ねた初めての訪問を歓迎したい。

 九州よりやや広い国土に約70万人が住む。国民の多くは熱心なチベット仏教の信者だ。山間の農業国だが、収入の柱は水力発電による電力の輸出だ。

 桃源郷という呼び名がふさわしい。ヒマラヤに抱かれた美しい自然に加え、前国王が唱えた「GNP(国民総生産)よりGNH(国民総幸福)」という考えが国造りの基本になっているからだ。経済成長より国民の幸せをという理念である。

 しかし鎖国に近い状態から徐々に国を開いたことで、外資が押し寄せつつある。人口増加の著しい首都ティンプーは建設ラッシュだ。商業施設が開業し、車も増えた。携帯やインターネットの普及も加速している。

 世界の情報が駆けめぐり、欲望が刺激される時代。GNHを掲げながら豊かさを実現できるか。小国の大きな実験だ。

 この国が取り組むもうひとつの試みは、民主化である。

 医療や教育の普及で国民から絶大な支持を得ていた前国王は98年、長く続いた国王親政から立憲君主制にかじを切った。絶対君主が自発的に権力を国民に譲った史上まれな決断だった。

 長男である現国王の即位後に上院、下院選を実施した。08年に新内閣が発足、国王の定年制や国王の解任権を国民に与えると定めた憲法が施行された。

 議会制より王の治世の継続を望む国民に対し、前国王は「悪い王の時も国が存続できる仕組みが必要」と説得したという。

 背景には近隣で相次ぐ王室の危機がある。70年代にラオスやイランの「革命」で王家は追い出された。08年にはネパールでも廃止された。敬愛されるタイの国王も政局混乱に対するかつての調停能力を失っている。

 経済のグローバル化が進み、統治のあり方にも世界標準が求められるなかで、選挙を経ない王室が政治権力を握り続けることはかつてほど容易でない。

 ブータンでも民主化の定着はこれからだ。インフラ整備やネパール系住民の難民問題など課題も多い。若い国王は、誕生したばかりの政府と協力して国造りにあたることになる。

 国交樹立から今年で25年となる日本は最大級の援助国として選挙にも協力した。顔つきや民族衣装が似ていることもあり、ブータン側の親日感情も強い。

 GNHと民主化。ふたつの挑戦を温かく見守り、協力を惜しまぬ姿勢を示したい。

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