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天声人語

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2011年11月15日(火)付

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 ある役所への電話。「ビアンコ部長いますか」「いません」「午後は働かないの」「いいえ働かないのは午前中で、午後は出勤しません」。『イタリア・ジョーク集』(大西克寛〈よしひろ〉著)にお借りした。こうした南欧ネタを腹から笑えなくなった▼部長どころかトップが働かない国はつらい。醜聞と失言の山を残し、かの国のベルルスコーニ首相が辞めた。ユーロ危機で国債が売り込まれる中、財政緊縮策と引き換えの退場だ。国内メディアを牛耳る金満家も、金融市場の圧力には逆らえなかった▼火元ギリシャやポルトガルの政権も代わった。20日に総選挙があるスペインや、大統領選を来年に控えたフランスも野党が優勢らしい。信用不安による「政権倒産」の連鎖である▼次の指導者が緊縮策を焦れば、ストや騒乱で経済がまた滞ろう。市場の警告と怒れる世論の間で、借金大国の政権はふらつくばかり。連なるドミノ駒の先には、白地に赤丸の一枚がある▼日本の大手銀行はイタリア国債をそこそこ抱えていて、そちらの傷口も心配だ。ユーロを「欧州の実験」と傍観できた十数年前、実験の白煙にむせぶ日本は想定外だった。今や地球上のあらゆる波乱が明日のくらしに響く▼米国は成長市場を囲い込もうと、環太平洋経済連携協定(TPP)にこだわる。日本ゆえに交渉が遅れる事態は許すまい。国益争いの非情である。南欧的「古き良き緩さ」の対極へと突き進む世界で、あわれビアンコ部長たちの居場所は官にも民にもない。

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