HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19881 Content-Type: text/html ETag: "2209ac-483e-5658ae00" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sun, 13 Nov 2011 02:21:23 GMT Date: Sun, 13 Nov 2011 02:21:18 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年11月13日(日)付

印刷

 ちゃぶ台返し、と聞いて昭和の人気野球漫画「巨人の星」を思い出す方もおられよう。わが世代には懐かしい主人公・星(ほし)飛雄馬(ひゅうま)の父親の「得意技」とされた。ところが原作にはその場面はないという▼一度だけ、主人公を張り倒したはずみでちゃぶ台が転ぶ。テレビアニメで毎週絵が流れ、「常習犯伝説」になったらしいと、前に同僚が書いていた。さて、漫画はともかく、本物の巨人である。「ちゃぶ台返し」がお家騒動の引き金になったようだ▼球団会長の渡辺恒雄(わたなべ・つねお)氏(85)が「鶴の一声」でコーチ人事を覆した、のだという。「一声」には慣れていると思われた身内からの反旗である。渡辺氏は反論の談話を出し、外からは理非は見えにくいが、ごたごたに辟易(へきえき)のファンは多かろう▼しょせんは内輪もめともいえ、世間に訴えた清武英利球団代表には、喝采とともに疑問視する声も飛ぶ。他球団ならここまで話題になるまい。名門に加え、君臨する渡辺氏の個性ゆえである▼大リーグの名門ヤンキースの大スターだったディマジオは言ったそうだ。「(球場で)自分を見るのが最初で最後の人がいる。その人のためにプレーしている」と。テレビのない時代、日々最高のものを見せようと張りつめるプロ魂は気高くさえある▼日本の選手にも同じ魂があろう。そんな選手の一途さにくらべ、澱(よど)んだような内紛劇は見るにつらい。いまや巨人は昭和の栄光から遠い。平成の巨人に「ナベツネ伝説」だけが残るようでは、ファンは寂しい。

PR情報