HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 11 Nov 2011 22:21:38 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:次期戦闘機(FX)選定 透明性をどう確保する:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

次期戦闘機(FX)選定 透明性をどう確保する

 防衛省で進む次期戦闘機(FX)選定作業は、十二月中の機種決定へ向け大詰めを迎えた。懸念されるのは、透明性が確保されるか怪しいことだ。

 防衛省は今年四月、FXに必要な性能や仕様などを示した提案要求書を受注を希望する米、英政府と関係企業に提示した。期限までに応募したのは、F35(米ロッキード・マーチン社)、F/A18(米ボーイング社)、ユーロファイター(英BAEシステムズ社)の三機種である。一機種を選び、十年前後かけて約四十機調達する。維持管理費を含めれば総額一兆円の巨大な航空商戦となる。

◆渇望した航空自衛隊

 東日本大震災で財政悪化が著しい中でも選定するのは、航空自衛隊が保有する戦闘機のうち、F4(六十七機)の老朽化が激しく、日本の防空能力が低下しているためである。本来ならF4が十八機退役した二〇〇八年度にも選ぶ予定だった。

 開始が遅れたのは、航空自衛隊がレーダーに映りにくいステルス機導入にこだわったからとみられる。米空軍の最新鋭ステルス戦闘機のF22を渇望したが、技術流出をおそれた米議会が輸出禁止を決議。決議は解かれることなく、ゲーツ前米国防長官から「(別のステルス機の)F35はどうか」と進言され、今日に至っている。

 F35の開発は大幅に遅れ、現在もテスト飛行の段階にある。一方のF/A18、ユーロファイターは実戦参加している現役機である。防衛省のFX選定が昨年までに行われたとすれば、F35は未熟過ぎて候補になり得なかっただろう。

 今回の選定にあたり、防衛省は荒技を使った。F15戦闘機を採用した一九七六年のFX選定で行った飛行審査を排除したのである。実際に飛ばすことなく、書面だけで決めるという。選定開始を遅らせたうえ、現役機と競う飛行審査を排除したところにF35への並々ならぬ思い入れがうかがえる。

◆構築中の新防空システム

 性能を比較すれば、機動性に富み、高高度まで上昇できるユーロファイターが一番だろう。欧州機の採用は、米国に不採用の理由を説明する政治家の胆力が問われよう。F/A18も「海軍機だからふさわしくない」という言い訳を捨てれば選択肢に入る。

 F35を売り込むロッキード・マーチン社は「期限までに納入できる」「ライセンス生産は可能だ」と強調するが、真偽のほどは不明である。米国での運用試験は一七年開始と伝えられるのに、防衛省の求める一七年三月の納入は可能なのか。他国への技術流出に目を光らせながら、日本ではライセンス生産を通じて最新技術を提供するという。本当だろうか。

 F35は、英、オランダ、イタリアなど八カ国が購入を前提に米国に開発費を出したが、正式に購入契約したのは、英の二機、オランダの一機だけとされる。F35を百機購入するとしていたオーストラリアは、開発の遅れを理由にF/A18を二十四機購入した。同機の追加購入とF35の購入断念が検討されている。

 そうした中で、日本の選択が注目されるのは当然だろう。防衛省が公表している評価基準は「性能」「経費」「国内企業参画」「納入後の支援態勢」の四項目。性能のよい戦闘機を安く入手し、国内でライセンス生産するのが理想的ではあろう。ただ、日本の防空は戦闘機だけが担うわけではない。

 防衛省は日本の技術を組み合わせてステルス機を発見し、迎撃する防空システムの構築を進めている。ステルス機は戦闘機のレーダーには映りにくいものの、周波数の異なる地上レーダーや熱を探知する赤外線で比較的発見されやすい欠点を持つ。そこで地上と上空からステルス機を探し、探知情報を戦闘機や地対空ミサイル部隊に伝え、迎撃する。世界最先端となる防空システムの完成は近い。

 兵器は、矛と盾の関係にある。ステルス機という矛に対し、これを防ぐ盾は必ず作られる。盾を開発しているのは日本だけではない。ロシアの最新鋭ステルス戦闘機のT50は、ステルス機を探知できるレーダーを搭載する。FXが防衛省に配備されるころには、各国でステルス機対策が進んでいることだろう。

◆ステルス機にこだわるな

 防衛省はステルス機にこだわるあまり、防空体制や国内産業基盤の維持、向上という肝心な点を棚上げしてはならない。一川保夫防衛相のいう「厳正・公正な選定」を検証するため、選定終了後には、候補機種ごとの採点結果を公表し、選定の透明性を示すべきである。防衛秘密を防波堤にした「公表は手の内を明かすことになる」などの逃げは許されない。世界中が日本の選択をみつめている。

 

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