HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19817 Content-Type: text/html ETag: "28433e-47fe-45422fc0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sat, 12 Nov 2011 00:21:13 GMT Date: Sat, 12 Nov 2011 00:21:08 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年11月12日(土)付

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 パソコンなどを燃えにくくする難燃剤に、リン酸トリフェニルという化学物質がある。小紙の過去記事を調べて知ったが、これもTPPと略すらしい。同じ3字が環太平洋経済連携協定の意で紙面にあふれるのは、ここ2年、米国が参加を決めてからだ▼あやふやなまま、短期にこれほど知れ渡った略称も珍しい。賛否両派がその「重大さ」を言い募り、もはや内政の可燃物である。与野党の反対を振り切って交渉参加に動く野田首相には、それなりの覚悟があるのだろう▼ただ、国民各層が熟考しようにも材料が乏しい。国論二分というが、利害の当事者や選挙が気になる政治家ほどに、熱くはなれない現実がある。道端で始まった口論に、「?」の人だかりができる図だ▼TPPとは何か。推進派によれば、乗り遅れたら生き残れないノアの箱船だが、反対派は日本を滅ぼす黒船だという。どちらも誇大広告だろう。それは、アジア太平洋地域の貿易と投資を円滑にする一案であって、箱船や黒船ではない▼船長格の米国には市場拡張の思惑があろうが、何をどう積むかは交渉による。国益を賭けた談判や国内調整の苦難と、新ルールが日本抜きで固まる不利。比べれば後者が大きく、「不戦敗」を避ける判断には一理ある▼無論、TPP参加が国民のくらしに資するかどうかは、ひとえに交渉力、要は米国にどれほど物が言えるかである。毒にも薬にもなるものを、いかにして日本再生の良薬とするか。本当の試練はそこに尽きる。

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