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インターネット空間で猛威をふるうサイバー攻撃は、防衛産業だけでなく政治や外交の中枢にまで標的を広げていた。衆議院の多数の議員のパソコンやサーバーから情報が盗まれた恐れが[記事全文]
プロ野球・横浜ベイスターズの売却が決まった。日本野球機構の審査を経て、12月1日のオーナー会議で認められれば、新球団「横浜DeNAベイスターズ」が生まれる。ディー・エヌ[記事全文]
インターネット空間で猛威をふるうサイバー攻撃は、防衛産業だけでなく政治や外交の中枢にまで標的を広げていた。
衆議院の多数の議員のパソコンやサーバーから情報が盗まれた恐れがあるほか、外務省や総務省なども狙われ、複数の在外公館では不正ウイルスの感染が確認された。
だれが、何の目的でやっているのか。実際にどれほどの被害が出ているのか。わからないことだらけで恐ろしい。
行為自体は、海外の情報要員が言葉巧みに近づき機密情報を持ち去る諜報(ちょうほう)に近く、気づかなければ情報の筒抜け状態が続いてしまう。
外交や防衛など特定の分野に被害が目立つことや、高度な技術をもつ海外の専門集団の関与がうかがえることから、日本の安全保障分野を標的にしたスパイ活動ではないかとの推測が広がっている。
攻撃元の特定などの実態解明が最も抑止効果があるが、政府の対応はうまくいっていない。
サイバー対策に責任をもつ内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)は、主な警戒対象を「大規模サイバー攻撃事態」としてきた。そして、大量のデータを送ってホームページの閲覧を妨げる嫌がらせや、電力や交通などの公共機関の機能をまひさせるサイバーテロに重点をおいてきた。
米国の取り組みがそうだったし、日本の過去の被害例も、外交問題にからむ政府機関のシステムへの攻撃が目立ったため、やむをえない面はある。
だが、次々に発覚しているのは、もっともらしい送信元の名前で、さもありそうな題名のメールを送ってくる標的型の攻撃だ。結果的に死角を突かれてしまったのは確かだ。
関係省庁を束ねて対処すべきNISCは今回、十分なリーダーシップが発揮できていない。被害をすぐに届け出なかった役所があったほか、警察や経産、総務、防衛など担当省庁の連携も薄く、ばらばらの感が強い。
まずは、なぜ水際で止められなかったのか、これまでの取り組みを総点検する必要がある。
同時に、もっと危機意識を高めることだ。標的型攻撃への最大の防御は、とにかく怪しいメールは開かないことに尽きる。
これを徹底するために、希望する省庁だけに実施してきた訓練を、政治家や全省庁の職員に義務づけるべきだ。
それとともに官民挙げて技術的な防護策の開発を急ぎ、政府一丸となった強力な対応策を練り直さねばならない。
プロ野球・横浜ベイスターズの売却が決まった。日本野球機構の審査を経て、12月1日のオーナー会議で認められれば、新球団「横浜DeNAベイスターズ」が生まれる。
ディー・エヌ・エー(DeNA)は携帯電話のゲームサイト「モバゲー」を運営するIT企業だ。若者は「モバゲー球団」として受けとめるだろう。小さな電話を舞台に100円単位の金を数千万の会員から集める業界が球団をもつ時代になった。
2004年の楽天、ソフトバンクに続く、IT企業による球界参入だ。これまで球団を持った親会社をながめると、新聞、鉄道、映画、自動車、食品、金融、テレビと変わってきた。勢いのある産業分野の移り変わりを感じずにいられない。
手放す側のTBSホールディングスは、年間20億円といわれる赤字に苦しんだ。かつて野球協約でうたったように、野球を「文化的公共財」とするなら、わずか10年で投げ出す責任も問われよう。買収したときに140億円だった球団株が65億円でしか売れなかったのも、価値を高める努力を怠ってきたからにほかならない。
これからDeNAに求められるのは、スポーツを扱う責任と覚悟である。きちんと野球に取り組む、ということだ。
春田真会長は「会社の価値を高めるためには球団の力が大きいと判断した」と話している。既存球団の反対で断念したが、はじめは「モバゲー」を球団名に入れることを望んだ。宣伝効果への期待をはっきりと口にしている。だが、ビジネスの道具としてだけとらえ、球団を持つだけで満足してもらうわけにはいかない。
テレビ視聴率が落ちて放映権料が減り、球団経営の見直しが叫ばれてひさしい。黒字球団は巨人や阪神などごく少ないといわれる。そんな厳しい環境で札幌に移った日本ハムや、仙台によった楽天は成功をおさめた。
キーワードは地域密着だ。
プロ野球の日米比較に詳しい大坪正則・帝京大教授は「地域や地元住民と密着しようという思想なしに、このビジネスは成り立たない。損益だけで球団経営を語るのは、その思想がない証拠」と指摘する。
まず、地元の横浜とどう向き合うかが問われる。
DeNAは、ソーシャルネットワークと連動した生中継や、野球ゲーム配信などのアイデアを示している。3年で球団の黒字化をめざすという。球界を刺激する気概をもって、新たな風を吹き込んでほしい。