HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 09 Nov 2011 20:22:03 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:タイ大洪水 恩を忘れず助けよう:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

タイ大洪水 恩を忘れず助けよう

 高潮のピークは越えたものの、タイの大洪水では五百人以上が犠牲になり、厳戒態勢が続く。タイの人たちが東日本大震災で寄せてくれた支援への恩を忘れず、濁水の中で苦しむ被災者を助けたい。

 ほぼ全域が水没した県で、高齢の女性はボランティアが差し入れた米や薬の入った袋を手を合わせて受け取り、笑顔で見送ってくれたという。水面の数十センチ上に張った板の上で寝起きする毎日。「ほほ笑み国」の人たちの気丈な振る舞いが、余計に胸を締めつける。

 インラック首相は「水は一〜二週間で減少する」と楽観的だが、大量の水が北からバンコク中心部に近づいている。政府や軍は水を東西の運河に迂回(うかい)させて海に流す努力をしているが、水は首都中枢を襲う可能性が高い。決して気を緩める時ではない。

 五十年に一度という豪雨が最大の原因だ。だが、被害を拡大させた人災の面もある。森林伐採による保水機能低下に加え、開発で遊水地が減ったことも大きい。タイで七年間研究生活を送った愛知大学の樋泉克夫教授は「アユタヤ周辺の広大な水田に土盛りして工業団地を造ったことで、天然の貯水池の役割が失われ、水が一気に都心に流れこんだ」と指摘する。

 アユタヤの活況で、地元経済は潤い雇用も拡大したが、こうしたタイ進出ブームが被害に影を落としている面も見逃せない。一方、タイは東南アジア最大の自動車や部品の生産拠点で、被害の長期化は世界の生産に打撃となる。多くの日系企業の被災も深刻だ。

 首相と最大野党出身の知事の政治的対立で洪水対策が遅れたとの批判もある。樋泉教授によると、首相の兄のタクシン氏が首相時代に本格的な治水計画を作ったが、反タクシン派との対立で手つかずだったという。長い政争の後遺症で国民が苦しむ事態を招いたのなら、なおさら人災との批判は避けられまい。

 東日本大震災で、私たちは海外の友人の支援のありがたさを痛感した。歴史的に友好のきずなを強めてきたタイは十二億円以上の義援金を寄せ、医療チームが二度にわたり福島県の被災地などを訪れてくれた。

 日本は仮設トイレや浄水器などの物資を送り、十億円の無償資金協力も決めた。衛生面や感染症などの対策が急務だ。排水や医療、土木の専門家派遣など、国際社会の先頭に立ち、本腰を入れて温かな支援の手を差し伸べたい。

 

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