オリンパスの異様に高額な企業買収疑惑は、投資の損失隠しが原因だと発表された。「適正」との従来の主張は虚偽だったのだ。粉飾決算の疑いが濃厚で、関係当局は早急に実態を洗い出すべきだ。
常識的な目で見れば、不自然極まりない取引だったことは間違いない。二〇〇八年に英医療機器メーカーを約二千百億円で買収した際、米投資助言会社に約六百六十億円もの額を支払った。買収金額のほぼ三割にもあたる金額だ。
〇六年から〇八年にかけて、国内の健康食品会社など三社を買収したときは、総額七百三十四億円もかけた。だが、〇九年には五百五十七億円を減損処理した。つまり、助言会社には異常に高い報酬を支払い、国内企業では“丸損”に近い買収をしたことになる。
この問題を指摘した同社の英国人元社長は解任され、トップ交代をわずか二週間足らずで繰り返した。現在の社長も一連の買収を「適正で問題がない」と言い張っていた。ところが、八日になって突然、同社は「一九九〇年代ごろから有価証券の損失計上を先送りしていた」と発表した。
要するに不自然な買収は、過去の損失を隠すために利用されたというわけだ。当然、この損失は決算報告に記載されていない。決算は企業経営の厳然たる指標であるだけに、オリンパスの行為は投資家へのまさに背信であり、投資判断を欺くものだ。
粉飾決算の疑いがある以上、検察当局への告発も視野に入れて、証券取引等監視委員会は厳正に調査せねばならない。租税回避地として有名な英領ケイマン諸島にある会社を経由するなど、買収資金は複雑な経路をたどっている。
既に米国の連邦捜査局(FBI)や英重大不正取締局(SFO)も捜査に乗り出している。一方で、日本の関係当局の動きが遅いとの指摘もある。不透明な取引実態の解明を急いでほしい。
副社長が解任されたが、悪質な損失隠しにかかわり、それを放置してきた歴代経営陣の責任は極めて重い。監査法人のチェック機能も問われる。何よりも企業のコンプライアンス(法令順守)やガバナンス(企業統治)が徹底していなかった点は深刻だ。
グローバル化が避けて通れない現代で、国際ルールを逸脱した企業は世界的にも信用失墜は免れない。決算の古傷を手の込んだ“化粧”でごまかすようでは、世界の市場からも見放される。
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