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27日に投開票される大阪府知事、大阪市長のダブル選が10日の知事選告示で幕を開ける。両選挙とも、大阪都構想をかかげる橋下徹・前知事率いる大阪維新の会と、既成政党が支援す[記事全文]
消費税を上げる法律が成立する前に、衆院を解散するのか。それとも成立したあと、実際に増税する前に解散するのか。衆院予算委員会で、増税と解散の時期が論議を呼んでいる。[記事全文]
27日に投開票される大阪府知事、大阪市長のダブル選が10日の知事選告示で幕を開ける。
両選挙とも、大阪都構想をかかげる橋下徹・前知事率いる大阪維新の会と、既成政党が支援する候補が争う構図だ。
民主、自民は単独で候補を擁立できなかった。共産も半世紀ぶりに市長選への独自候補の公認・推薦を見送り、批判してきた平松邦夫市長の支援に回る。
自主投票の公明も含め、維新の政治手法を厳しく批判してきた各党は単独での選択肢を示さなかった。批判は免れない。
都構想が争点となる。
人口約267万人の大阪市を30万人程度の特別自治区に分割し、広域行政体の都と基礎自治体の区で仕事を分担する。
区長を公選制にして区議会を置き、独自の権限で予算を組むことも想定している。
政令指定都市と府県の二重行政の弊害は指摘されて久しい。図書館や体育館を重複して作ったり、港湾や都市計画で区域ごとに縦割りの権限をもったり。構想は、こうした無駄の解消がねらいという。
一方で、区議会や区独自の財政部門を新たに設けるコストの問題や、市のスケールメリットを損なうおそれも指摘される。
長い歴史を持つ大阪市に愛着を持つ住民も多い。枠組みだけではなく、市民生活への影響を含め具体的に論じるべきだ。
平成の大合併をへて指定市が次々と誕生し、現在は19市となった。だが道府県との役割分担や権限、税財源の仕組みは、制度のできた半世紀以上前と基本的に変わっていない。
大阪をはじめ多くの指定市で高齢化が進み、求められる公共サービスもかわりつつある。若者に魅力があり、高齢者が安心して暮らせる都市のあり方を論じる選挙戦を期待したい。
他にも争点は目白押しだ。
大阪市の生活保護受給者は全国最多の15万人で、18人に1人の割合だ。
大阪府の完全失業率は長く全国ワースト3。中でも20〜30代の高さが目立つ。事業所数はここ20年で20%以上減った。
学力格差などの教育施策や財政再建、災害時に首都機能を代替する副首都の役割についても各陣営の考えを聞きたい。
過激な発言で注目を集め、政治に独裁が必要と主張する「橋下流」も選挙で問われる。
橋下氏に関しては、本人に直接関係のない情報を含め、過剰ともいえる報道が週刊誌で見られた。言うまでもなく選挙は政策を競うものだ。有権者はじっくり吟味して判断してほしい。
消費税を上げる法律が成立する前に、衆院を解散するのか。それとも成立したあと、実際に増税する前に解散するのか。
衆院予算委員会で、増税と解散の時期が論議を呼んでいる。
発端は野田首相が先週、主要20カ国・地域(G20)首脳会議があったフランスで、「法案が通って、実施する前に信を問う」と、同行記者団に述べたことだった。
民主党は09年の政策集に「税率5%を維持」すると記し、鳩山首相は「4年間、消費税の増税を考えることは決してない」などと繰り返した。
このため自民党や公明党は、いまの衆院議員の任期中に増税を決めるのは公約違反であり、法成立の前に解散して信を問うのが筋だと迫っている。
これに対し野田首相は、法律が成立しても実際の増税はまだ先であり、その増税前に解散するのだから、違反にはあたらないと反論している。
首相の説明は、明らかに強弁であり、おかしな言い分だ。
鳩山氏の発言は、4年間は消費増税を決めないとしか聞こえなかった。財源のあてのないマニフェストをはじめ、民主党が選挙めあてに無責任な言動を繰り返してきたのは事実であり、消費税もその「甘言」のひとつだった。
だから、首相はまず率直にわびるべきだ。そして、ユーロ危機の深刻さを直視し、消費増税の必要性を丁寧に説明することだ。それなしに、議論は深まらない。
一方で、自公両党の主張にも首をかしげざるを得ない。
そもそも、消費増税を含む税制改革について「11年度までに必要な法制上の措置を講じる」と、09年の改正所得税法の付則に定めたのは自公政権だったではないか。
つまり現状では、解散しても「増税か反増税か」を争う政権選択選挙にはなりえない。何のための解散なのか。それとも、自民党は消費増税の旗を降ろすつもりなのか。
いま政府・民主党も自民党も急ぐべきは、消費増税の具体策づくりだ。時期や上げ幅はもちろん、社会保障制度をどう見直し、子育て世代への支援をいかに充実させるのか。それぞれの政策を明示して、一致点と相違点をはっきりさせてほしい。
増税ではなく歳出削減で財源を賄うという政党は、何を削るのかをもっと明確にすべきだ。
こうした具体策をまとめようともせずに、空疎な解散論を戦わせる国会は、あまりに危機感が足りない。