HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19850 Content-Type: text/html ETag: "396905-481f-37132bc0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Tue, 08 Nov 2011 22:21:49 GMT Date: Tue, 08 Nov 2011 22:21:44 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
高千穂製作所の誕生は約90年前、大正半ばである。八百万(やおよろず)の神々が宿る高千穂の峰。海外に通じる製品を作らんと、商標は世界の高天原(たかまがはら)、ギリシャ神話の聖地から拝借した。オリンパスの名は、こうして生まれる▼高貴な社名と、先人の理想を裏切る失態である。企業買収に絡む不自然な散財。巨額を動かした目的は、バブル期から引きずる含み損の穴埋めだった。粉飾決算は上場廃止に値する不名誉だ▼真相に迫る英国人社長を切った前会長兼社長、副社長、常勤監査役らこそ、不正に手を染めた面々だとか。自浄能力のない日本の経営陣と、独り乗り込んで悪を暴く外国人。単純明快な筋立てが悲しい▼内視鏡のトップメーカーである。それが財テクの古傷を見過ごし、いや、見て見ぬふりで20年も放置し、切るに切れぬ病巣にした。手術には外国製のメスを要したが、それは一本で十分だった。この情けない展開、ことは企業統治の緩さに関わり、日本の企業や市場全体が疑われかねない▼大王製紙の前会長が子会社の金を使い込んだ件では、同族経営の甘さが言われた。オリンパスで問われるべきは、サラリーマン役員の無責任と保身だろう。不正を抱えたまま出世できる気楽な稼業である▼顕微鏡と体温計に始まる同社は、戦後間もなく世界初の胃カメラを世に出した。内視鏡の先駆として、数えきれぬ人命を救ってきた開発陣が気の毒でならない。誇り高き光学企業が、技術ではなく不正経理でつまずく不条理を何としよう。