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東日本大震災の復興費用をまかなうための臨時増税のうち、所得増税の期間を25年にすることで、民主と自民、公明の3党が合意した。政府・民主党の当初案は10年だったが、公明党[記事全文]
国の金の使い方を調べた会計検査院の2010年度決算検査報告がまとまった。いつもながら、ため息のでる指摘が並ぶ。経費の二重計上、使えないコンピューターシステムの開発、契約[記事全文]
東日本大震災の復興費用をまかなうための臨時増税のうち、所得増税の期間を25年にすることで、民主と自民、公明の3党が合意した。
政府・民主党の当初案は10年だったが、公明党の意見を受けて15年になり、自民党の主張をいれてさらに10年延びた。
臨時増税の税収は、復興資金をいち早く確保するために発行する復興債の返済にあてる。日本の財政は先進国の中でも最悪の水準だ。国の借金残高は1千兆円を上回る見通しとなり、国内総生産(GDP)の2倍を超す。復興のための財源をあらかじめ確保したことは、一定の責任を果たしたと言える。
ただ、25年は長すぎる。
1年あたりの増税額を抑えるためだが、将来の世代に負担を先送りしないことが臨時増税の目的だったはずだ。建設国債を60年かけて返済しているのと比べれば短いとはいえ、これから生まれてくる世代にも負担増が及ぶ長さである。
心配なのは、増税に対する与野党の姿勢だ。一連のやりとりから浮かび上がるのは、国民に負担増を求める決断から逃げたい、という姿勢である。
政府・与党はこの夏に決めた「社会保障と税の一体改革」で消費税収を社会保障にあてることにし、2010年代半ばまでに消費税率を段階的に10%へ引き上げる方針を決めた。来年の通常国会に法案を出す予定で、今年末までに増税の時期や幅などを決める段取りだ。
ところが、民主党内では依然として反対が根強い。当選回数が少ない議員が多く、次の選挙への影響が心配なのだろう。
国の財政を圧迫している最大の原因は、高齢化に伴う社会保障費の増加だ。社会保障費は、建設国債の対象となる道路や橋などとは違い、まさに今の世代のために使われる。それを借金でまかない、将来の世代につけ回してはいけない。先送りはもう限界だ。欧州の財政危機は対岸の火事ではない。
自公両党にも注文がある。
09年に改正された所得税法の付則には「消費税を含む税制の抜本的改革を行うため、11年度までに必要な法制上の措置を講じる」との規定がある。決めたのは自公政権だ。
さらに自民党は、昨年の参院選での公約に「消費税は当面10%とし、全額を社会保障費に充当する財源とします」と掲げていた。忘れてもらっては困る。
財政の悪化に歯止めをかけるには、増税から逃げてはいけない。与野党ともこのことを自覚してほしい。
国の金の使い方を調べた会計検査院の2010年度決算検査報告がまとまった。
いつもながら、ため息のでる指摘が並ぶ。経費の二重計上、使えないコンピューターシステムの開発、契約の不備……。公の金から支払っているのに、なかには、その元となる取引が本当にあったか確認できない、などという例もあった。
原発の立地計画がある自治体に交付金を払うため積み立てている金も、9割の657億円がムダと判定された。地元との調整が進まず、立地のめどがたたないのに巨費を囲い込む必要はないとの意見だ。原発事故を受け、多くの人が抱いた疑問に応えたといえよう。
同様の指摘は9年前と6年前にもあったのに、仕組みを根本から見直す動きはなかった。いったい何のための検査か。経済産業省はもちろん、歴代政権と国会も批判を免れない。
08〜09年度の補正予算で緊急経済対策として設けられた基金の6割、実に2兆円が塩漬けになっているという検査報告にも考えさせられた。その金を他の施策に回していれば、助かった人も企業もあっただろう。
この問題は、当初予算以上にチェックが甘い補正予算の実態を浮き立たせたともいえる。
規模を膨らませて「やる気」を見せたい政権。ここぞとばかりに予算獲得に走る省庁。それぞれの事業の必要性にほとんど踏み込まず、とおりいっぺんの審議で承認する国会。報道の力不足も認めざるを得ない。
将来の決算を意識して政府は予算を組み、適切に執行する。国会はそれを精査する。震災復興に多くの国費が投入されるいま、そんな政治への転換を納税者は強く求めている。
政府の行政刷新会議は今春、民間委員の声を踏まえ、検査院に対し、手続きミスによる数百万円の過大支出よりも「政策効果の乏しい億円単位の支出」に切り込むことを求めた。限られた職員や時間をどうやり繰りして成果をあげるか。検査院のあり方も問われている。
あわせて、国全体でチェック機能を強くすることも必要だ。省庁や自治体の内部統制はなお十分といえず、検査院が「数百万円」に目を光らさなければならない状況が現にある。
弁護士や会計士など外部の人材を役所の中に積極的に受け入れ、法令順守の意識を植えつける。時代にあわない仕事のやり方や取り決めは大胆に見直す。検査院がメリハリをつけて動ける環境を整え、監視の実をあげていかなければならない。