被災地に残るがれきの最終処分が進まず、復興の妨げになりかねない。国は広域処理を目指すが、放射能汚染への懸念がぬぐえず、広がらない。安全性の確立と情報提供を徹底しながら進めたい。
環境省によると、東北三県のがれき推計量は約二千二百七十万トンで仮置き場への搬出はまだ六割。同省は福島県のがれきは県内処分とし、岩手、宮城県の約二千四十万トンのうち両県での処理能力を超える分の受け入れを、各都道府県に打診した。
都道府県レベルで受け入れるのは東京だけ。第一弾として岩手県宮古市から運び入れた。都内の民間施設で破砕、焼却した上で焼却灰を東京湾の処分場で埋め立てる。宮城県分を含め三年間で約五十万トンを受け入れる。石原慎太郎都知事は「持ちつ持たれつで救うべきだ」と話し、山本正徳市長は「復興への一歩になる」と感謝する。これが、良い前例になって広がれば、と願いたい。
環境省の四月調査では、四十二都道府県の五百七十二市町村が受け入れ可能と回答、処分量を年間四百八十万トンと試算した。その後、福島県内だけでなく広範囲に放射性物質が飛散している実態が明らかとなり、受け入れ方針を撤回する自治体が相次いだ。
京都五山の送り火や愛知県日進市の花火をめぐる騒動もあった。がれき受け入れでは都民から抗議が殺到し、都は「安全確認されたがれきに限る」と答えている。住民が納得できるよう丁寧に説明を繰り返すしかない。復興への足を引っ張ることは避けたい。
国は埋め立て処分しても問題ないとする基準を、焼却灰に含まれる放射性セシウム濃度が一キログラム当たり八〇〇〇ベクレル以下と定めた。作業従事者の被ばく量を年間一ミリシーベルト以下に抑えられる数値だという。その合理的説明は国の仕事だ。
都は搬出時はもちろん、搬入後も破砕、焼却、埋め立て後の各段階で放射線測定し、すべてのデータを公表する。良いモデルになれればいい。破砕後のがれきからは検出されなかった。
愛知県の大村秀章知事が国に要望したように、処分場の跡地利用の指標や、災害廃棄物の除染技術の確立も必要だろう。国には、地域に応じたきめ細かい対応を求めたい。
がれき処分は復興への第一関門だ。幸い、受け入れを表明、または検討する市町村が出てきた。各地で広域処理しても完了までに三年はかかる。どう進めていくか、国も自治体も苦心してほしい。
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