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天声人語

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2011年11月7日(月)付

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 次の選挙まで1年となったアメリカ大統領には、これまでに43人が就任した。多士済々だが政治家らしからぬ人もいる。第30代カルビン・クーリッジもその一人だろう。あまりの寡黙に「サイレント・キャル」なるあだ名がつくほどだった▼現職の急死で副大統領から昇格した。無為、無言を旨とした珍しい人で、米史学者の故・猿谷要さんによれば「何もしないことを芸術の域にまで高めた」などと評されたそうだ。当人は「何も言わないために傷つけられたことはない」が口癖だったというから、筋金が入っている▼在任していた1920年代、米国は「金ぴか時代」と呼ばれる空前の繁栄に酔っていた。政治が何もしなくても経済は踊った。圧勝で再選されているから、苦境のオバマ氏は羨(うらや)むに余りあろう▼その幸運な人の、無為はともかく「無言」で思うのは、わが野田首相である。先の衆院代表質問で、公明党の斉藤鉄夫氏が「あなたは物言わぬ総理」と突いた。同感の人は多かろう▼ふらふら無定見にしゃべる首相も困るが、「物言えば唇寒し」では国民も寒い。そのくせ外に出れば消費増税を国際公約する。国民に向けた先の所信表明では一言もなかった。どんな作戦か知らないが、釈然とはしない▼多答弁型だが中身がないと言われたのは佐藤元首相だった。「総理はいらんことをしゃべらんからいい」と役人は喜んだそうだ。今日から山場の国会。国民に語る気概を欠く「サイレント」のままでは、希望は見えにくい。