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2011年11月6日(日)付

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ユーロ危機―政治の混迷は許されぬ

フランス・カンヌでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議のさなか、欧州と世界の経済が再び激震に見舞われた。国債が急落していたイタリアは、国際通貨基金(IMF)の監視下に[記事全文]

世界人口70億―生まれくる君たちに

先ごろ亡くなった作家小松左京氏に「午後のブリッジ」という短編がある。世界の人口増加によって動物が食べ尽くされ、ほとんど絶滅してしまった。人々が口にするのは合成食品ばかり[記事全文]

ユーロ危機―政治の混迷は許されぬ

 フランス・カンヌでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議のさなか、欧州と世界の経済が再び激震に見舞われた。

 国債が急落していたイタリアは、国際通貨基金(IMF)の監視下に入ることになった。

 ギリシャではパパンドレウ首相の政治的駆け引きによって、債務不履行(デフォルト)への懸念が一気に高まった。

 ユーロ圏首脳らが先月、難交渉の末、政府債務問題に対する包括策をまとめたばかりだ。空中分解させてはならない。欧州はもちろん、世界各国も結束して対応してほしい。

 金融市場に高まっているのは、政治指導者をはじめとする統治システムへの不信感だ。

 イタリアのベルルスコーニ首相は、長期政権のもとで腐敗や汚職への批判を浴びてきた。国債の急落を受けて、年金制度の見直しや国有財産の売却といった改革案をまとめたが、市場はその実行力を疑っている。

 ギリシャの場合、危機の発端は前政権による財政赤字の粉飾だった。年金カットや公務員削減などの緊縮策に対する国民の反発にさらされるパパンドレウ首相は、国会での信任を得たものの、与野党の対立は厳しく、政局は流動化している。

 この間、パパンドレウ首相は突然、ユーロ圏への残存の是非を問う国民投票の実施を宣言したが、内外の反発を受けて撤回した。あまりにリスクの大きい政治的な賭けだった。

 歴史を振り返れば、民主主義の源流はイタリアやギリシャにさかのぼる。その民主主義がうまく機能せず、世界経済を混乱させていることを欧州は深刻に受け止めねばならない。

 イタリアやギリシャが政争に明け暮れ、財政再建の手綱を緩めれば、両国だけでなく、世界経済が危機に陥る。総選挙で政治刷新を行うにしても、市場の混乱を招かないよう時期は慎重に選ぶ必要がある。

 G20会議に集まった首脳はユーロ危機克服への協調をうたった。しかし欧州の混乱に振り回され、財政不安の国や銀行を支援する欧州金融安定化基金(EFSF)への資金支援については、新興国からの約束を取りつけられなかった。

 一歩前進だったのは、IMFの新たな貸出制度への取り組みだ。資金繰りに困った国々に短期資金を上限なく貸し出す枠組みである。G20各国は早急に具体策を詰めてほしい。

 政治が足踏みを続けている間もマネーは国境を超えてうごめいている。早急に危機克服への道筋をつけなければならない。

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世界人口70億―生まれくる君たちに

 先ごろ亡くなった作家小松左京氏に「午後のブリッジ」という短編がある。

 世界の人口増加によって動物が食べ尽くされ、ほとんど絶滅してしまった。人々が口にするのは合成食品ばかり。そんな近未来世界で、肉の味を忘れられない中高年世代がトランプ遊びを口実に、ひそかにつどう小宴をえがいた作品だ。

 世界人口が先日、ついに70億人に達した。今から50年前、その数は30億人を少し超えた水準だった。わずか半世紀で2倍以上になった。

 人口爆発による食糧危機はこれまで幾度もとなえられた。人類は、作物の品種改良や増産によって危機への転落を防いできた。小松氏が描いた悪夢の未来はまだ、来そうにない。

 実は、この半世紀で平均寿命は48歳から68歳へと20年も伸びた。栄養改善などのおかげだ。長寿は幸せの条件である。70億人到達を国連が「人類の成功」というのもわかる。

 とはいえ、今の世界のありようは、やはりおかしい。先進国に飽食と肥満が広がる一方で、アフリカ東部では飢餓が起きている。資産家への富の集中を批判する運動が欧米で広がっているが、先進国と貧困国との格差はもっと大きい。

 私たちを取り巻く環境もむしばまれている。地球温暖化を引き起こす二酸化炭素の排出は増え続け、ヒト以外の生物種は急速に減り続けている。

 国連が予測する2050年の世界人口は93億人前後。インドが中国を追い抜き、アジアの都市人口は2倍に膨れあがる。

 貧困国の出生率はなお高い。人口増を抑えるためにも女性の地位を向上させ、教育や医療を広めなければならない。

 若者の増加とともに、人口の高齢化も進んでいる。中国や東南アジアなど経済が伸びている国々ではこれから、多産少死から少産少死の段階へと進む。いま世界で9億人とされる「60歳以上人口」は今世紀半ば、24億人前後に増える。

 石油や天然ガスなどの有限な資源、さらには水や食糧をめぐる紛争が激しくなれば、その影響は日本にも確実に及ぶ。

 人口増のテンポは緩くなっている。それでも世界人口は1年に8千万近く増えていく。

 1日に約37万人の赤ちゃんが「オギャー」と生まれてくる。今日一日だけで日本でも約3千人が誕生する。

 かけがえのない地球に70億の人間がひしめきあう。生まれくる君たちのために、より良い世界をつくっていきたい。

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