「福島」と船体に書かれた漁船や冷蔵庫、テレビ…。日本から三千キロ離れた米ミッドウェー諸島付近の北太平洋で九月下旬、東日本大震災の津波で流された漂流物がロシアの帆船に発見された▼命とともに、海に引き込まれた建築物のかけらや生活物資はどれほどの量になるのだろう。一部は潮流に乗ってゆっくり移動、ハワイ大国際太平洋研究センターの予測では三年後に米西海岸に到達するという▼「がれき」を辞書で引くと、「価値のない物、がらくた」と説明がある。木材や金属片に交ざって衣類やアルバムなどの暮らしの痕跡を目にすると、がれきと一言でくくるのはためらってしまう▼その震災がれきの処理にきのう、動きがあった。岩手県宮古市から約三十トンが処理を受け入れた東京都内に到着、中間処理業者に搬入された。東北以外での受け入れは初めてだ▼不安解消のために、搬出時と選別作業後に放射線量を測定。福島第一原発から宮古市まで約二百六十キロ、東京までは二百三十キロだ。計測される線量も大きな差はない。それでも、都に抗議が殺到したのは、線量の高いがれきをなし崩し的に受け入れる疑念や測定がなおざりになる不安をぬぐえないからだろう▼受け入れを表明する自治体は十分の一にまで激減した。がれきの処理は被災地復興の最優先課題だが、徹底した情報の公開がなければ危うい。