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2011年11月4日(金)付

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福島の除染―中間貯蔵施設をどこへ

安心して暮らせる環境を取り戻すため、どんな手順で、どの程度の時間をかけて、放射性物質に汚染された土や落ち葉などを取り除いていくか。東京電力福島第一原発の事故に伴う除染作[記事全文]

裁判員と死刑―情報公開し広く議論を

パチンコ店で5人が犠牲になった放火殺人事件で、大阪地裁は被告に死刑を言い渡した。弁護側が「絞首刑は憲法が禁じる残虐な刑罰にあたる」と主張したことから、裁判員裁判で初めて[記事全文]

福島の除染―中間貯蔵施設をどこへ

 安心して暮らせる環境を取り戻すため、どんな手順で、どの程度の時間をかけて、放射性物質に汚染された土や落ち葉などを取り除いていくか。

 東京電力福島第一原発の事故に伴う除染作業について、政府が工程表をまとめた。

 大規模な作業を強いられる福島県での計画はこんな内容だ。

 市町村ごとに仮置き場を用意し、3年ほど保管する。仮置き場から運び出す土などの受け皿として、県内に1カ所、中間貯蔵施設を造る。利用は2015年初めから30年以内とし、最終的には福島県外で処分する。

 環境省の推計では、福島県で取り除く土や、落ち葉などを燃やした後の焼却灰は計2800万立方メートル、東京ドーム23杯分におよぶ恐れがある。除染をできるだけ早く始めるため、3段階の工程にした。

 ところが、その実現の見通しがたたない。

 まずは仮置き場だが、市町村ごとの場所探しが進まない。国有林などが候補地だが、保管が長期になることを恐れる住民から「いつ仮置き場がなくなるのか、見通しがないと受け入れられない」との声が相次いだ。

 政府の答えは「3年」。だがその前提となる中間貯蔵施設の場所は「12年度中に決める」と先送りした。必要な面積は3平方キロメートル〜5平方キロメートルで、保管期間は最長30年になる。その先の県外の最終処分場は文字通り白紙の状態で、立地の難しさは仮置き場の比ではないだろう。

 しかし、中間貯蔵施設に早くメドをつけないと、仮置き場づくりも進まず、除染作業が遅れかねない。政府は責任を持って取り組まねばならない。

 その際、福島県や県内の市町村の意向を尊重するのは当然のことである。

 福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域のうち、原発に近い地域に自宅がある避難者の一部からは、中間貯蔵施設の受け入れもやむをえないとの意見が出ている。自宅周辺の汚染状況や、福島第一原発の先行きを考えた上での判断だろう。こうした声が広がるのかどうか、慎重に見極めたい。

 中間貯蔵施設の具体策の検討とともに、土や焼却灰から放射性物質を分離し、汚染物の量を減らす研究も急ぎたい。既に10余りの方法について実証研究が始まっているという。

 除染が順調に進むかどうかは福島再生への取り組み全体を左右する。とても難しい選択になるが、ここでつまずくわけにはいかない。

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裁判員と死刑―情報公開し広く議論を

 パチンコ店で5人が犠牲になった放火殺人事件で、大阪地裁は被告に死刑を言い渡した。

 弁護側が「絞首刑は憲法が禁じる残虐な刑罰にあたる」と主張したことから、裁判員裁判で初めて死刑の違憲性が争われた。結論は「合憲」だった。

 裁判員法は、憲法判断などの法令解釈は裁判官が担当すると定めている。今回は裁判長が「裁判員の意見を聴きたい」と審理への参加を求めた。

 最高裁は1955年、絞首刑について「他の方法に比べてとくに残虐という理由は認められない」と、合憲の判断をした。

 それから半世紀がたち、情勢は大きく変わった。欧州諸国は死刑を廃止し、続ける国でも絞首刑は減っている。

 今回、オーストリアの法医学者が法廷に立ち、「首が切断されるおそれがある」と話した。元最高検検事は死刑執行に立ち会った体験から「正視に堪えず、残虐な刑罰に限りなく近い」と証言した。

 裁判員の意見を踏まえた判決は「絞首刑には前近代的なところがある」と指摘したうえで、「死刑にある程度のむごたらしさを伴うことは避けがたい」と、合憲の結論を導いた。

 判決後、記者会見した裁判員は、議論に必要な情報が少なかった、と語った。

 裁判長は、受刑者の身体に損傷が生じた事例などについて国に照会したが、法務省は「回答できない」と突っぱねた。

 法務省は以前から、死刑に関する情報開示には極めて消極的だ。刑の執行状況などについても明らかにしてこなかった。

 しかし裁判員制度が始まり、市民は直接、死刑と向き合うことになった。実態をつまびらかにしないまま、究極の刑罰について判断を求めることがあってはならない。法務省は、死刑やその執行をめぐる情報を積極的に公開するべきだ。

 昨夏、当時の千葉景子法相が刑場を公開し、死刑の是非を考える勉強会を省内に立ち上げた。だが相次ぐ法相の交代などで議論は進んでおらず、情報の開示も不十分なままだ。

 個別の事件の法廷は、死刑制度の是非や、執行の合違憲を論じる場としては限界がある。

 ある裁判員は「死刑の存廃を含め、国民的な議論の場が必要と感じた」と話した。「死刑問題への取り組みも職責」という平岡秀夫法相は、議論の場を広げる努力を怠ってはならない。

 判決は「どの執行方法を選択するかは立法裁量の問題」とも指摘した。議論を深めるため、国会も手を尽くす必要がある。

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