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11月3日付 編集手帳

 国語辞典で調べ物をしていて生まれた歌だろう。歌人の小池光さんに一首がある。〈遊里語「すかや」すなはち「好かないねえ」広辞苑のゆきずりの頁に〉。ページを繰っていて思いもかけず、色街の古い言葉に出会ったらしい◆俳句のほうでは中原道夫さんの句に、〈褒美の字放屁(ほうひ)(とな)るあたたかし〉とある。こちらは異質な言葉が隣り合う妙味を歌っている。寄り道あり、ご近所探索あり、辞書を引くのはどこかしら散歩に似た楽しみがある◆仕事柄、辞書を手にしない日はほとんどないが、今年ほど心の弾まぬ調べ物の多い年はない◆セシウム、シーベルト…耳慣れない言葉に接するたびに辞書の助けを借りてきた。今度は希ガス元素「キセノン」だという。辞書によればギリシャ語で「見知らぬ」を意味する「ksenos」に由来するとか。極微量ながら検出されたところから推測して、福島第一原発の2号機で小規模な臨界が起きた可能性がある、と聞けば、とても辞書で散歩する気分にはならない◆〈人の世や嗚呼(ああ)にはじまる広辞苑〉(橘高(きったか)薫風(くんぷう))。3・11に始まった悲しみの“嗚呼”は、いつ終わる。

2011年11月3日01時54分  読売新聞)

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