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天声人語

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2011年11月2日(水)付

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 日本でいちばん深い地下鉄は10年ほど前にできた都営大江戸線で、最深の六本木駅ホームは42メートルの地底にある。埋設物が多く、古くからの地下鉄や地下街が入り組む東京だ。新参の路線は腰を低くし、頭(こうべ)を垂れてもぐるしかない▼十数本の路線が縦横に走る闇の世界は、迷宮に例えられる。ものの本によれば、首都の足元には旧軍の防空壕(ごう)やら、政府の「秘密トンネル」やら、この国の裏面史を埋め込んだような不思議な空間が広がるとか▼たまに不発弾騒ぎがある通り、住宅地にも何が埋まっているか分からない。世田谷区で計測された高い放射線の出どころも、福島の原発ではなく地中だった。現場の食品スーパーを掘り起こしたら、ラジウムらしきものが出た▼同区では、やはり高線量を糸口に、空き家の床下からラジウムが出たばかり。あそこも拙宅から遠くはなかったが、今度は歩いて10分だ。そこに取材車が列をなした。小中学校も近く、親御さんは心配だろう▼原発事故で不安に駆られ、通学路を線量計でパトロールする父母は多い。念入りに調べた地域ほど、事故とは無関係の放射線源も見つかりやすい。凶悪犯をあぶり出すローラー作戦で、長く潜伏する別の犯人が網にかかるようなものだ▼世田谷だけではあるまい。なにせアスファルトの下は「異界」である。地中だけでなく、そして放射能に限らず、見えぬがゆえに意識の外に放置している危険はほかにもあろう。知らないということ、安心とイコールではない。

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