世界の人口が三十一日で七十億人になる。国連は貧困と不平等の解消や地球環境保護など七つの課題を掲げているが、まずは人口が急増する途上国に食料を供給し、社会の安定を支えたい。
国連人口基金(UNFPA)が発表した二〇一一年版「世界人口白書」によると、多くの国で出生率は低下しているが、現在の傾向が続けば五〇年には九十億人を超すと推定される。
この二十年間で人口は急激に増えたが、飢餓や貧困率、幼児の発育不良などが改善された。だが、現在でも必要な栄養を摂取できない「飢餓人口」は世界で約九億二千万人もいる。
世界人口の三分の一以上を占める中国とインドは経済成長を続け、食料需要は膨らむ一方だ。先進国を中心に穀物がバイオ燃料に利用され、投機マネーの対象にもなって価格高騰が続く。人口増加はアフリカや南西アジアに集中しているが、経済力が弱く常に食料不足に直面する。
国連や先進各国は穀物の価格を監視して安定供給の枠組みをつくり、途上国に対しては農業生産性を高める支援を拡充すべきだ。
世界人口の43%が二十五歳未満の若者であり、後発途上国ではその比率は60%に達する。中東の民主化運動「アラブの春」では、失業中の青年たちの怒りが独裁政権打倒の大きな原動力になった。
未来を担う世代への投資が必要だ。学校教育と識字率向上、情報技術(IT)習得や職業訓練など、若者に就労の場を提供する多様なプログラムを推進したい。
貧しい途上国では深刻な性差別が残る。少女を学校に通わせ、重すぎる家事労働から解放し、若い女性の社会進出を促す政策を進めなくてはならない。
国連は新たな課題として、前例のない人口の高齢化を挙げた。白書によると、総人口に占める六十歳以上の比率は13%だが、五〇年には26%へと倍増する見通しだ。先進国だけでなく、経済発展が著しい新興国でも対策が追いつかないほどの速さで高齢化が進む。
長生きになったのは食生活と保健・医療の向上による大きな成果だが、一方で若年労働人口の減少や財政負担増による経済の停滞も懸念される。
既に超高齢社会に入った日本の政策は各国の先例になる。健康な高齢者の雇用を創り出し、地域との関わりを促しながら、年金や医療制度の改革を実現できるか。多くの国が注視している。
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