HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 29 Oct 2011 03:22:14 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:町長襲撃時効 忘れまい暴力の拒絶:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

町長襲撃時効 忘れまい暴力の拒絶

 岐阜県御嵩町長が襲撃された殺人未遂事件が三十日に十五年の時効を迎える。産廃処分場建設で闇の社会の関与が疑われたが真相はいまだ不明だ。暴力が行政をねじ曲げることを許してはならない。

 時効を前に、当時の柳川喜郎町長が二人組の男にバットのようなもので襲われた現場を訪れた。山あいの私鉄駅から歩いて数分。畑のわきに、今もそのマンションがあった。近くの寺にお参りに来た女性は「忌まわしい事件。でも決して忘れてはいけない」と事件の風化を恐れる思いを口にした。

 御嵩町では一九九一年、産廃業者が処分場建設に乗り出した。町は業者と協定を結び三十五億円の協力金を受け取るはこびだった。だが、柳川氏が町長に当選し「住民投票が必要」と岐阜県に手続き凍結を求めると反対派住民への嫌がらせが起き、町長宅の盗聴も発覚した。この時点で町長の身辺警護や捜査をせず、結果的に襲撃を招いた警察の失点は大きい。

 逮捕者は三十人以上に上り、二つの盗聴グループの主犯格の男らに業者から数千万円の金が渡っていた。本紙の取材に柳川氏は「産廃絡みしか考えられない」と言うが、延べ十五万人以上を動員した警察は襲撃事件を解明できていない。緊急配備などの初動捜査が遅れ、警察内部の意思疎通も十分でなかったという。この種の犯罪の防止には犯人逮捕が何より効き目のあることは論をまたない。

 襲撃の五年後には、栃木県鹿沼市で、市と産廃業者の癒着をただそうとした職員が殺された。犯行を依頼した産廃業の社長は自殺し暴力団員の実行犯四人が逮捕された。巨額の産廃マネーに群がる集団は、殺人という究極の暴力を使っても行政に圧力をかけるという闇の深さを忘れてはならない。

 二〇〇七年に警察庁などが全国八百五十二自治体に行ったアンケートでは、反社会的勢力から約三割が不当要求を受け、そのうち約一割が応じたという。柳川氏の勇気で住民投票が実施され処分場計画はつぶれたが、御嵩町事件は氷山の一角だ。

 処分場は必要であり、主に都市の廃棄物処理のため建設地の住民が苦悩するのは古くて新しい問題である。許可権を持つ岐阜県は昨年、業者に住民合意を得る努力を求める手続き条例を施行した。社会全体で暴力団を排除する条例もできた。行政や住民の意思が暴力に屈することのないよう、私たち一人ひとりの自覚も必要だ。

 

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