日本語を習って間もない外国人は、われわれが飲食店での注文の際など、普通に使う「私は、カレー」のような言い方に面食らうらしい▼確かに、私は人間で、カレーではない。「〜が欲しい」が省かれているわけだが、これも日本語の表現だから覚えてもらうほかない。一つ例題を出そう。「自転車は、車道」。警察庁が最近、その徹底を全国の警察本部に指示した原則である。この場合は「〜を走る」が省略されている▼自転車が安全走行できる車道があるのに、歩道を走行したり、危険な速度で走ったり、ベルを鳴らして歩行者をどかせようとしたりすれば、車道を走るよう警察官が指導する。悪質な場合には、赤切符を切るなど指導・摘発を強化するという▼自転車と歩行者の事故が急増しているための対応策。確かに、自転車側には少なくとも、歩行者への遠慮がもう少しあってよい。ただ一方で、自転車と自動車の車道での“共存”にも難しい面があるのが現実。実際、自転車事故の八割は自動車との間で起きている▼歩行者、自動車、自転車と使う側は「三」なのに対し、使える道は歩道、車道の「二」というところに土台、無理がある。いわば<九尺二間に戸が一枚>。つまり、あちらたてればこちらがたたず、だ▼無論、お金も時間もかかる。でも、根本的には「自転車は、自転車道」にしていくよりない。