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天声人語

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2011年10月29日(土)付

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 時の流れに意味の変わる言葉がある。「拙速」は今はよろしくない言葉だが、もとは「やり方はまずくても事の運びが早いこと」を言い、尊ばれた。「可もなく不可もなし」も、孔子さまが語った本来の意味とはだいぶ違っている▼あらかじめこうしようと決めてかからない、といった意味だという。ものの本によれば、中国では今も「決まった考えを持たない」といった表現に使うそうだ。さて、わが野田首相である。就任以来の無難一点張りに、今と昔の双方の意味を重ねてみたくなる▼きのうの所信表明もしかりである。「安全」に気を配る演説は、与党議員も拍手のしどころに困ったのではないか。紋切り型をちりばめた安定感はあっぱれだが、自分の言葉は少なかった▼震災復興を除く一番の聞かせどころが、自らと閣僚らの給与カットではつらい。いまや火種のTPPや普天間はさらりとかわし、社会保障と消費増税は触れもせず。君子危うきに近寄らず、だろうか▼過ぎたるは及ばざるが如し、と孔子さまは中庸の徳を説いた。野田さんも中庸を旨とするが、この信条は往々に、主体性のなさや日和見主義の別名のことがある。首相はさにあらずと信じたいが、米国や官僚、経済界への「抵抗力」が気にかかる▼唐突だが、名横綱の大鵬を思い出す。「大鵬に形なし」とも言われ、自らは形をなさず、融通無碍(ゆうずうむげ)に相手を受け止めて白星を重ねた。それならいいのだが、似て非なる「形無(かたな)し」にはならぬよう、切に願いたい。

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