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10月26日付 よみうり寸評

 〈北杜夫文学の原風景は“原っぱ”である〉――奥野健男氏の評。原っぱは戦前の東京・山の手育ちの子供には懐かしい場所である◆北杜夫こと斎藤宗吉少年は昭和2年の生まれ。東京・青山の原っぱは「楡家(にれけ)の人びと」の姉弟たちの遊び場。メンコやベーゴマで遊び、生きた自然と接したかけがえのない自己形成の場だった◆北さんが麻布中学1年のとき、2年生に奥野氏がいた。氏は〈北文学の魅力は、作者がみずみずしい少年の魂を(うしな)わずに、いつまでも保っているところにある〉とも書いている◆北さんは珍しい高山の昆虫にひかれて旧制松本高校に進む。が、勤労動員中、東京の自宅が空襲で焼け、長年収集した昆虫標本は一夜にして灰になった◆以後、昆虫少年斎藤宗吉は文学青年北杜夫となった。「楡家の人びと」は三島由紀夫が〈戦後に書かれたもっとも重要な小説の一つ。これこそ小説なのだ!〉と評した◆「どくとるマンボウ航海記」以来、熱心な読者が多い。ユーモアと少年の魂の作家が84歳で逝った。

2011年10月26日13時46分  読売新聞)

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