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10月26日付 編集手帳

 テレビドラマで巡査役の大滝秀治さん(86)が登校児童に横断歩道を渡らせた。俳優は十人が十人、そういう場面では子供たちを優しく誘導する。大滝さんはまるで物でも扱うように高圧的に移動させた◆ドラマを見た本職の警察官が感心したと、脚本家の倉本聰さんが自著に書いていた。警察官いわく、「作り物ではない警察官の、日常の優しさだ。こうでなければ人の命は守れない」と◆その人が現れるや、画面に陰翳(いんえい)が刻まれる。比類のない存在感は精魂込めた役づくりの賜物(たまもの)だろう。大滝さんが今年の文化功労者に選ばれた◆「こんな顔で、こんな声でしょ。若い頃から電車で女学生の前にうっかり立とうものなら、席を譲られて、ボクはたいへん不名誉なね、屈辱感を味わいまして…」。あるインタビューで回想している。その顔が、その声がいまは、舞台、映画の観客やテレビの視聴者を物語の世界に引き込み、魅了してやまない◆「君は俳優に向かない。やめると決心するのも才能だ」。昔、所属する劇団民芸の重鎮でもあった名優、滝沢修から転職を勧められたという。人生とは分からないものである。

2011年10月26日01時23分  読売新聞)

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