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海は広くも大きくもない、という一文を、作家の椎名誠さんが7月の小紙に寄せていた。椎名さんは『地球がもし100cmの球だったら』という絵本を紹介しつつ、この惑星の有限性を述べている。直径1メートルに縮尺すれば大気の層はわずか1ミリしかないのである、と▼すべての水はビール大瓶1本分。海水を除いて人が飲める水はスプーン1杯の量しかない――など、目を開かされた例えをふと思い出した。国連によれば、この31日に世界の人口が70億人になるそうだ。地球が相対的にどんどん小さくなっている▼19世紀には100年かけて10億人増えた。推移のグラフは20世紀になって跳ね上がり、いまは世界で1分ごとに約140人増えているそうだ。2050年までに93億人と聞けば、自分も一員ながら地球は大丈夫かと心配になる▼海と同様、大地も無辺ではない。史上、下り坂の文明は、人口増加や収奪農業による土壌の劣化、食糧不足による争いといった「衰退のらせん」を転げ落ちたのだという。同じ轍(てつ)を人類全体が踏まないよう知恵と策がいる▼漠とした不安を問う詩が茨木のり子さんにある。〈人類は もうどうしようもない老いぼれでしょうか それとも まだとびきりの若さでしょうか 誰にも 答えられそうにない 問い〉▼海も大地も、そのおっぱいをしゃぶりつつ痛めつけていては先は暗い。地球は過去からの授かりもの。そして未来からの預かりもの。消尽と破壊を戒めて、「母子」ともに若くありたい。