千葉県柏市で高い放射線量が検出された。東京都世田谷区のケースと違い、東京電力福島第一原発事故が原因のホットスポットのようだ。身近に潜む汚染に、監視の手を緩めるわけにはいかない。
やはり福島第一原発から離れた場所でも、ホットスポットはあったということだ。
文部科学省が公表した、土壌表面の放射性セシウムの蓄積量を示した汚染マップでも裏付けられている。放射性物質の雲が風に流されて、原発から離れた柏市でも高線量が検出された。
ただ、データ公表が遅すぎないか。早く公表されていれば、自治体の測定・除染活動は迅速に始められただろう。
柏市に汚染情報を通報したのも住民だった。住民からの通報で分かったものの原発事故とは無関係だった世田谷区のケースは、騒ぎすぎだとの批判もあった。だが、汚染の実態を知ろうという市民の動きは、汚染から生活を守る生命線になったといっていい。
食品を介しての内部被ばくも市民には実態が分からない。国は食品中の放射性物質の暫定規制値の見直しを始める。
現在、食品安全委員会が定めた放射性物質の被ばく上限値に基づき、厚生労働省が食品の暫定規制値を決めている。あくまで緊急時の規制値との位置付けだ。
汚染との長期戦に備え食品安全委員会は、新たな規制値の基となる上限値の評価案をまとめた。厚労省で検討が始まるが、規制値はより厳しくすべきだ。
チェルノブイリ原発事故後の住民を支援するベラルーシの研究者は、多くが食品による内部被ばくなのに日本の飲料水のセシウム規制値はベラルーシの二十倍と批判している。内部被ばくの影響を受けやすい子どもや妊婦の規制値はさらに厳しいという。
被ばく住民支援で実績のある現地からの声だ。真摯(しんし)に受け止めなければならない。
規制値を厳しくすれば、出荷制限を受ける産品が増え生産者に打撃を与えかねない。だが、生産者に配慮して規制値を手加減すべきではない。
市民が安心を得られる規制値にしなければ意味がない。生産者支援は補償の充実など別の方法で考えるべきだ。
扱う商品の自主検査を始め、結果を公表する大手スーパーもある。市民の監視の目は厳しくなっている。市民と国、自治体が協力し汚染の防御に徹したい。
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