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天声人語

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2011年10月25日(火)付

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 10進法の世の中で、「9」は「大部分」という意味合いを持つ。たとえば「九死に一生」などと言う。このごろはアメリカ発の「99%と1%」をよく耳にする。強欲資本主義を難じ、一握りが富を独占して大多数は貧しいと訴える意味はご承知の通りだ▼この合言葉に共感する人は、沖縄をどう思われようか。面積は国土の1%に満たず、人口は1%強。そこに国内の米軍専用施設の74%がひしめく。99%が1%に負担を強いる理不尽を、沖縄は長く「小指の痛みは全身の痛みではないのか」と訴えてきた▼その小指に塩をすり込むような、野田内閣の動きである。米国に急(せ)かされ、止まっていた普天間飛行場の辺野古移設に慌てて走り出した。社長に一喝されて部下に無理を押しつけるような、小物(こ・もの)の中間管理職を見る思いがする▼いまや計画の実現は難しい。来日した米の国防長官に、首相と閣僚は自らの言葉で沖縄の実情を言う胆力があろうか。それとも追従の官僚語に終始するのだろうか▼小紙連載の「CM天気図」で、天野祐吉さんが「ふつう」の感覚がおかしくなっていると書いていた。1%が大金持ちで99%が貧乏人。そんな世の中をふつうのように思いこまされている感覚はかなりおかしい、と▼沖縄の基地もそうだろう。1%の島には本土と異なる戦後があった。それを本土の人は「ふつう」と思いこんできた。「無関心」とも言い換えられる感覚である。異様がふつうに映る怠惰は、それが政治家ならなおさら怖い。

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