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2011年10月25日(火)付

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国家戦略会議―首相の使い方しだいだ

野田政権が近く、国家戦略会議を発足させる。首相が議長で、閣僚6人と日銀総裁ら6人の民間議員で構成する。税財政の骨格、経済運営の基本方針などをつくる「司令塔」と位置づける[記事全文]

牛肉の検査―科学的な判断の尊重を

牛海綿状脳症(BSE)を発見するための世界一厳しい日本の検査基準と、それに基づく輸入制限は妥当か。厚生労働省の審議会が検討を始める。米国が輸入条件を緩めるよう求めたのに[記事全文]

国家戦略会議―首相の使い方しだいだ

 野田政権が近く、国家戦略会議を発足させる。

 首相が議長で、閣僚6人と日銀総裁ら6人の民間議員で構成する。税財政の骨格、経済運営の基本方針などをつくる「司令塔」と位置づける。

 民主党は衆院選マニフェストで、官民が集う国家戦略局を設け、予算の骨格や国の将来像を描くと唱えた。それが戦略局をつくれぬまま、国家戦略室で対応してきた。

 その議論の中身が見えにくいと批判されると、菅政権は戦略室を事務局に、新成長戦略実現会議を立ち上げ、その議事内容を公開した。こんどの戦略会議は、それよりもっと幅広いテーマを扱うという。

 ただ、戦略会議が重責を果たせるか、いささか心もとない。

 類似の組織として思い浮かぶのは、小泉純一郎元首相が駆使した経済財政諮問会議だ。民間議員らの手を借りて、与党が受け入れにくい方針も打ち出し、反対勢力を押し切ろうとした。

 菅直人前首相の場合は、原発事故後のエネルギー政策の見直しを、新成長戦略実現会議のもとに置いた組織に担わせた。原発を国策としてすすめてきた経産省に、主導権を与えないためだった。

 やり方に巧拙はあったが、ともに「首相主導」を実現させる装置として、それぞれの会議を活用していた。

 では、野田首相は戦略会議をどう使うのか。その肝心の首相の意図が見えてこない。

 まず、人選がわかりにくい。民間議員は個人の立場だというが、米倉弘昌経団連会長、古賀伸明連合会長ら、いわゆる組織代表が中心だ。既得権の代弁者にもなりかねない。

 おまけに、米倉氏は「世界のエネルギー政策には原発が不可欠」という姿勢である。どんな改革の旗振り役を期待しているのだろうか。

 そして何より、野田首相の政治手法が、与野党と話し合い、課題をこなしていく合意重視型に見える。民主党政権がこの2年間、合意形成に苦労したのを踏まえた現実的な対応だろう。来年度予算編成で、政府・与党会議で特別枠の配分を決めるのもその一例だ。

 では、戦略会議は予算編成にどうかかわるのか。環太平洋経済連携協定(TPP)など目の前の課題に絡むのか否か。まずは首相が明確に示さないと、戦略会議は役割を果たせまい。

 各省の縄張り意識を取り払う予算配分や政策を打ち出せるかどうか。問われるのは、首相の意思と力量である。

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牛肉の検査―科学的な判断の尊重を

 牛海綿状脳症(BSE)を発見するための世界一厳しい日本の検査基準と、それに基づく輸入制限は妥当か。厚生労働省の審議会が検討を始める。

 米国が輸入条件を緩めるよう求めたのに続き、フランスからも禁輸の見直し要求が出たことが背景にある。だが、本来なら食の安全を守るうえで有効か、自ら検証する課題だ。

 日本で最初にBSEに感染した牛が見つかって9月で10年。新しいデータや実績に基づき、必要な見直しをすべきだ。

 BSEは、プリオンというたんぱく質の異常がもとで起き、感染した牛の肉骨粉を飼料として与えられた牛に広がった。発生後の01年、肉骨粉を飼料にすることは禁止された。

 この10年で見つかった感染牛は36頭だが、大半は飼料規制前の生まれで、規制後は02年生まれの1頭だけだ。その後は見つかっていない。世界でも、92年の約3万7千頭をピークに、昨年は45頭と激減した。

 その中で、日本の厳しさは際だつ。プリオンがたまるには時間がかかり、普通は生後3年以上たたないと検査でも見つからないとされる。猛威をふるった欧州諸国でも現在の検査対象は生後72カ月以上だ。

 日本では消費者の安心のためにと、若い牛を含めて全頭の検査が始まった。21カ月以上でも安全には変わりないとして05年に国の基準が緩和された。08年には20カ月以下の検査への国庫補助が打ち切られたが、自治体がその分の約8900万円を負担して全頭検査が続いている。

 プリオンがたまりやすい特定危険部位と呼ばれる部分も、欧米では、扁桃(へんとう)と小腸の一部を全頭で除去するが、背骨などの除去は高齢牛のみだ。日本ではすべての牛で取り除く。

 米国からの輸入は現在、日本向けに背骨を除去した20カ月以下のものに限られており、国際的な基準に基づいて緩和を求める声が強まっていた。

 政府は、30カ月以下に広げることを検討中という。現在のような厳しい検査と制限が必要なのか、改めてリスクを評価し、納得を得られる基準にしたい。むろん、生産者と流通がルールをしっかり守ることが前提だ。

 国民の健康を守るために、必要な労力と費用を全体でどう割り振るかも考えて判断したい。

 原発事故をきっかけとする日本の農産物などの輸入制限に対し、政府は相手国に科学的な根拠に基づく対応を求めている。

 それが説得力を持つためにも、BSE対策で科学的であることは欠かせない。

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