HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19827 Content-Type: text/html ETag: "7bf845-4808-8b7184c0" Cache-Control: max-age=3 Expires: Sun, 23 Oct 2011 23:21:43 GMT Date: Sun, 23 Oct 2011 23:21:40 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2011年10月24日(月)付

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 週末、見送りのため成田空港に出かけた。出発ロビーの華やぎには、空前の円高が一役買っていたかもしれない。円相場は1ドル=75円台の最高値を塗り替え、ユーロに対しても強含みが続く。海外旅行の買い物リストは伸びるばかりだ▼円高の源は欧州の債務危機という。どうにか収まると見ればユーロが買い戻され、円も連れ高になる。まだこじれると読めば、ユーロを売って円を買う。いずれにせよ、どんよりした欧米の景気に比べ、震災復興という絶対目標がある日本は買いらしい▼欧州の首脳は、銀行が抱えるギリシャ国債の価値を半減させる案を練るやに聞く。貸金の半分を踏み倒されては銀行もきつい。やむなく新興市場からお金を引き揚げ、世界経済が同時に縮こまりかねない▼欧州統合は平和の理念と、商いの実利を両輪に進んだ。経済の帰結とみえるユーロも、大欧州を誇示する政治色の濃い産物だ。通貨は一つなのに、財政は国ごと。果実を急(せ)いた末の中途半端こそ、宿命的な弱点といえる▼日米とて、ユーロの矛盾を笑える財政ではない。経済学者の浜矩子さんは「レスキュー隊が助けを求める怖い状況」と、火消し役であるべき財政の恐慌に警鐘を鳴らしていた。世界経済は総崩れの危機にある、と▼世界恐慌といえば1930年代が思い浮かぶ。ギリシャでも日本でも、富裕層の国外逃避が言われるが、破局が広がる速さは往時の比ではない。安全地帯はなかろう。目先の円相場より、忍び寄る影が気になる。

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