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大阪府の橋下徹知事が辞職し、大阪市長選に立候補することを正式に表明した。11月27日は知事選とのダブル選になる。橋下氏は「大阪都構想」を掲げ、市の解体・再編を主張する。[記事全文]
巨大地震がまた日本を襲うかもしれない。東海・東南海・南海地震や首都直下地震は、いつ起きてもおかしくない。いざそのとき、政府や自治体が救助や復旧に動きやすいよう制度や法律[記事全文]
大阪府の橋下徹知事が辞職し、大阪市長選に立候補することを正式に表明した。11月27日は知事選とのダブル選になる。
橋下氏は「大阪都構想」を掲げ、市の解体・再編を主張する。これに対し再選をめざす平松邦夫市長は、市の存続を主張し、都構想に反対する。
大都市の自治のかたちをどうするか。それを正面から問う選挙になる。地域主権の今後をうらなう意味でも重要だ。
橋下氏は3年8カ月の在任中にどんな成果をあげ、何を残したのか。「橋下流」を総括する機会でもある。
おかしいと感じたことは臆せず主張し、世論を味方につけて変革を促す――。
例えば、地方分権推進の立場から、国の出先機関の廃止と自治体への移管を全国の先頭に立って主張した。地方に負担をしいる国の直轄事業負担金を「ぼったくりバー」と批判し、見直しのきっかけを作った。
この夏、15%の節電要請をした関西電力に情報公開を迫った。「だまされてはだめ。まるで霊感商法」と断じて、原発維持がねらいと指摘した。
記者の質問から逃げず、ツイッターでも発信を続けたことが高い支持率につながった。激しい言動は、世間の目を意識した「橋下劇場」とも呼ばれた。
一方で、意見の違う相手を抵抗勢力として徹底攻撃する姿勢は、しばしば物議をかもした。強引な政治手法の是非も、選挙で問われることになる。
代表をつとめる大阪維新の会が春の統一地方選で府議会の過半数を制すると、公約にもなかった君が代の起立斉唱条例を成立させたことは記憶に新しい。
自分で言いだしながら、やり残した仕事も多い。
府庁舎を大阪湾岸の高層ビルに全面移転する計画は、東日本大震災後、防災拠点として難があるとされ、頓挫した。府議会の反対を押し切って買い取ったが、あと始末の方向性も決まらぬままの途中退任である。
維新の会が鳴り物入りで府議会に提出した職員基本条例案と教育基本条例案は採決せずに継続審議とした。府総務部や府教委、橋下氏が任命した教育委員らが強く反発し、対立解消の見通しもない。
既成政党は、維新の議会運営や橋下氏の政治手法を批判してきた。知事選では、民主が弁護士の郷原信郎氏の擁立を検討している。自公と連携し、統一候補にすることも模索しているが、出遅れ感は否めない。
一日も早く態度を固め、対立軸を示す責任があるだろう。
巨大地震がまた日本を襲うかもしれない。東海・東南海・南海地震や首都直下地震は、いつ起きてもおかしくない。
いざそのとき、政府や自治体が救助や復旧に動きやすいよう制度や法律を見直さなくてよいか。関係する大臣や専門家の会議で近く検討が始まる。
いまのしくみは、市町村がまず災害対応にあたり、必要なら都道府県や国が助けるというものだ。伊勢湾台風のあと、1961年にできた災害対策基本法や、終戦まもない47年の災害救助法が、柱になっている。
だが水害と違い突然やってくる大地震や、いくつも市や県境をまたぐ広い災害のときは、国がもっと前に出るべきではないか。そう言われてきた。
東日本大震災ではどうだったのだろう。
震災の日、岩手県陸前高田市や大槌町は役場が津波にのみこまれ、まちの壊滅を外に伝えることすらできなかった。自治体の機能が失われたとき、どれだけ早く助けを届けられるか。うかび上がった宿題だ。
この震災では、初めて首相がトップとなる緊急災害対策本部が設けられた。救援物資を集めるのは本来自治体の仕事だが、政府が直接のりだした。トラック業界や食品会社に大号令をかけ、自衛隊も使った。
それでも、被災地ではガソリンが底をつき、集積所に一時、滞った物資があふれた。
人手が足りない被災地を支えたのは、あちこちからかけつけた自治体職員だった。被災県ごと受け持ちを決めた関西広域連合や、内陸部で支援の拠点をかってでた岩手県遠野市のとりくみが知られる。日本じゅうのまちが、避難者を受け入れた。
自治体からはこうした広域支援に対し、国がお金の面倒をみると初めに言うべきだった、調整の指揮をとるべきだった、といった声が上がる。
国、都道府県、市町村、そして住民。連携がうまくいったのはどの部分で、目づまりしたのはどこか。検証のうえ、防災計画に書きこむ役割分担や、法律の運用、法律そのものの見直しに、踏み込んでほしい。
いま被災地がいら立つのは、なにより復興施策のもたつきだろう。有識者の提言を受け、東日本大震災復興基本法ができたのが、震災3カ月半後。復興庁や特区をつくる法案の審議は、やっとこれからだ。
次の巨大災害に備え、理念や原則を示す一般的な「災害復興基本法」も、あらかじめ整えておくべきではないか。ぜひ話し合ってほしい点だ。