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2011年10月22日(土)付

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防災域の拡大―廃炉の基準に反映を

原発事故の際、避難や屋内退避を含む防災対策を準備しておくべき地域を、半径8〜10キロ圏から30キロ圏に広げる。原子力安全委員会が防災区域の拡大案を打ち出した。5キロ圏内は、ただちに避難する区[記事全文]

リビア新時代―初めての民主主義へ

またアラブ世界で歴史的な瞬間を目にすることになった。リビアを42年間支配したカダフィ氏の死亡と体制の崩壊である。チュニジア、エジプトで始まった「アラブの春」の続きといえ[記事全文]

防災域の拡大―廃炉の基準に反映を

 原発事故の際、避難や屋内退避を含む防災対策を準備しておくべき地域を、半径8〜10キロ圏から30キロ圏に広げる。原子力安全委員会が防災区域の拡大案を打ち出した。5キロ圏内は、ただちに避難する区域だ。

 福島第一原発の事故では、半径20キロ圏が立ち入り禁止となるなど、大規模な住民避難が現実のものになった。見直しは当然の措置だろう。

 30キロ圏への拡大で、対象となる市町村は44から135に増える。人口は4倍近くに膨らむ。圏内の自治体は、住民への連絡手段の確保、避難計画や訓練、放射線量を測る態勢といった対策を考えなければならない。

 いざというときの備えを充実させることは大切だ。ただ、人口の多い地域で大きな事故が起きた場合、迅速に避難することがどこまで可能だろうか。

 福島では、20キロ圏内の人口は約7万8千人。それでも、すぐに情報が伝わらなかったり、避難時に大渋滞が生じて何時間も立ち往生したり、高齢者が取り残されたりした。

 全国の原発の30キロ圏内には、政令指定都市や県庁所在地も含まれる。17カ所ある既存の原発のうち、15カ所で対象の住民が25万人を超える。

 最も多いのは、東海第二原発(茨城県東海村)の106万7千人だ。企業城下町の日立市、行政機能が集中する水戸市がすっぽりと含まれる。

 99年に核燃料加工会社JCOの臨界事故を経験した東海村の村上達也村長は、防災マニュアルの強化などをはかってきた。

 だが、福島の事故後の混乱を目の当たりにして、「どんな計画をつくっても、こんな人口密集圏での避難は無理と悟った」という。今月11日には細野原発事故担当相と会い、すでに運転開始から30年を超す東海第二の廃炉を提案した。

 私たちも原発の段階的な削減にあたって、老朽化した原子炉や大きな地震を経験して耐久性に不安が残る原発とともに、周辺地域で十分な避難・防災計画を講じるのが困難な原発は廃炉にするよう提言してきた。

 防災区域の見直し案を機に、それぞれの自治体が防災計画を練り直す。避難のためには道路や避難場所の整備などに、巨額の費用がかかる場合もあるだろう。それでも原発が必要か。経済的、社会的なコストを真剣に検討しなければならない。

 野田首相は「寿命がきたものは廃炉にする」としているが、避難の実現性も廃炉の基準のひとつとして、明確に位置づけるべきだ。

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リビア新時代―初めての民主主義へ

 またアラブ世界で歴史的な瞬間を目にすることになった。リビアを42年間支配したカダフィ氏の死亡と体制の崩壊である。

 チュニジア、エジプトで始まった「アラブの春」の続きといえる。しかし、両国に挟まれたリビアの様相はかなり異なる。内戦になり、国連安保理の決議による北大西洋条約機構(NATO)の空爆があった。

 最後は、血まみれのカダフィ氏の映像がネットで流れた。死亡は私刑によるものではないかとの疑問がでるなど、血なまぐさい幕切れとなった。

 近く暫定政府ができ、リビア新時代の幕が開ける。だが、前途は多難だ。議会選挙や憲法制定を経て2年以内に正式な政府をつくる。カダフィ体制では議会も憲法もなかったから、民主化はゼロからの出発となる。

 反カダフィ派は旧政権の離反組、都市住民、部族勢力、イスラム勢力など寄り合い所帯だ。意識も利害も異なる。強権がなくなって、各勢力の権力闘争や暴力が噴き出すのではないかという心配がある。

 しばらくは行政サービスや経済活動の混乱が続き、国民生活は困難が続くだろう。

 危機を避けるためには、すべての勢力に政治的な発言の自由を約束し、人々が異なる意見や主張に接する、議論と理解の場をつくることが必要だ。国民の本音を伝える新聞やテレビなどメディアの育成も急がれる。

 混乱に乗じた犯罪を防ぎ、秩序をまもる軍や警察をつくることも緊急の課題だ。

 いずれもリビア国民が中心となるが、国際社会が支援しなければ進まないことも多い。

 リビア国民も国際社会も、内戦や軍事介入の発想から、国民のくらしの再建をまず優先する頭の切り替えが要る。

 国内では内戦を担った武装勢力を軍や警察に再編し、武力を持つ者が政治的な発言権を持たないようにする文民支配のルールをつくらねばならない。

 リビアは良質な原油を産む国であり、国際的な資源争奪の場になりやすい。空爆の主力だった英仏や、アラブ世界から作戦に加わったカタールなどが、戦後復興でそのまま影響力を持ち続けないようにすることも大事だ。正式政府の発足まで、国際的な支援の窓口を国連で一本化することを提案したい。

 リビア国民は長期の強権支配で苦しみ、8カ月の内戦でさらに多くの犠牲者を出した。

 自由で平和な国へ生まれ変わるために、過去の暴力が未来の暴力につながらぬよう、支援にも細心の注意が要る。

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