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10月20日付 編集手帳

 戦時中、劇作家長田秀雄の戯曲『飢渇(きかつ)』が上演された。事前に台本を警視庁に提出したところ、以下のセリフが問題になった。〈奥さん、どうか一度だけ、接吻(せっぷん)させて下さい〉。「接吻」はけしからんと、その2文字が墨で消されて返ってきた◆検閲済みの台本で稽古をしたとき、俳優はグッと言葉に詰まり、「とても、これは言えません」と、演出家に泣きついたという。随筆家、車谷弘さんの『銀座の柳』(中公文庫)にある◆言葉は文脈のなかで生きている。一語を抜き出して「けしからん」と非難しても意味がない◆野党には“バカ”を問題視する向きもあるようだが、これを失言とみなすのはいささか気の毒だろう。「私の高校の同級生のように、逃げなかったバカなやつがいる」。津波の被害に触れて、平野達男復興相がそう発言したという。じかに聴いたわけではないが、どうして逃げてくれなかったんだ、ばかやろう…という気持ちならば、分かる◆向田邦子さんがある対談で語ったことがある。〈もし「バカ」が差別用語になったら、放送作家をやめるわ〉。暴言退治と言葉狩りの区別を忘れまい。

2011年10月20日01時25分  読売新聞)

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