プロ野球のレギュラーシーズンに決着がついた。興奮さめやらぬ中、間もなく日本一を目指す戦いが始まる。沈みがちな世の中に、大熱戦で少しでも元気を吹き込んでほしいものだ。
福岡ソフトバンクホークスが独走で優勝を決めたパ・リーグ。一方のセは対照的に劇的な展開だった。一時は大差をつけられていた中日ドラゴンズが、終盤の快進撃でずっと首位に立っていたヤクルトスワローズを一気に逆転したのだ。チームを八年間にわたって率いた落合博満監督の、今季限りの退任が発表された中でなし遂げられた逆転優勝は、長くファンの記憶に残るだろう。
東日本大震災の発生により開幕を遅らせて始まった今季。未曽有の国難に向き合った選手たちは、少しでも被災地に元気を届けたいという思いを込めてプレーしたはずだ。これから始まるクライマックスシリーズ(CS)と、それに続く日本シリーズでも、その初心を忘れずに、見る者を引きつけて離さないような激戦を毎試合繰り広げてほしい。
人気低落に悩むプロ野球は、いまだ再興の途上にある。終盤の緊迫や新たなスターの活躍、好投手同士の投げ合いなどで注目を集めはしたが、全体の低迷、停滞を脱するきざしは相変わらず見えてきていない。
まずは、多くの球団の苦しい経営状況がある。さらに地上波のテレビ放映の激減、観客動員の伸び悩み、スターの米流出、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)参加をめぐる問題−と、マイナス要因や困難な課題ばかりが目立つ球界。ここへきて、また球団の身売り話も出てきている。
これに対して、日本代表常設などの活性化策も打ち出されてはいる。ただ、再興への柱となるべきは、もっと基本的なことだろう。ひとつは、それぞれのチームがしっかりと力をつけて互いに譲らぬ白熱の競り合いを見せること。もうひとつは、各球団が文字通り一体となって危機に立ち向かう姿勢である。現状修正にとどまらず、一からつくり直すほどの気概が求められる時代なのだ。
いずれにしろ、CS、日本シリーズという今季の最終章では、ファンを大いに楽しませる試合をぜひとも望みたい。震災の被害、経済の低迷などをはじめとする厳しい社会状況。再興への確かな歩みを進めるためにも、こんな時こそ野球の「元気を運ぶ力」をたっぷり見せてほしいのだ。
この記事を印刷する