正直、「目」のいい人がうらやましい。若い時分からの近眼に加えて、近年は老眼も。メガネの掛け外しは何とも煩わしい▼昔、恐ろしく目のいい人に会ったことがある。遠くアフリカはケニアで、野生動物を観察するサファリをした時だ。ローレンスと名乗った現地のガイドは、時折、遠くを指さし「あそこに○○がいる」と動物発見を伝える▼こちらは必死で目を凝らす。だが、何も見えない。かなりの倍率の双眼鏡をのぞく。だが、見えな…いや、あ、いる! それぐらい彼には見えた。視力を測定したらどんな数字になるか▼中日ドラゴンズの落合監督も相当、「目」のいい人とお見受けする。現役時代を思えば無論、動体視力も人並み外れていようが、言いたいのはそういう目のよさではない。素人考えだが、落合野球の神髄とは、選手を見る「目」の確かさではないか▼でなくては、派手な補強もなしに、チームにあれほどの成績は残させられまい。日々の調子、潜在力を見抜く「目」から、時に大胆、時に奇矯にも見える選手起用や采配が生まれる気がする▼中日が、セ・リーグ連覇を決めた。「勝つことが最大のファンサービス」という人の、恐れ入る有言実行ぶりだが、今季限りで退任する監督の“花道”には、先がある。リーグ覇者として勝ち取る初の日本一。監督の「目」は、もうそこに向いていよう。