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10月18日付 編集手帳

 劇作家、宇野信夫氏の自宅に落語家の柳家甚語楼(のちの五代目古今亭志ん生)が遊びにきた。談笑しているうちに、甚語楼がこっくりこっくり居眠りを始める◆と、だしぬけに顔を上げ、苦笑交じりに言い訳をした。「どうも、ジャリ(子供)が朝早くから目を覚まして胸の上を歩きやァがるから、目に借りが出来ちまって…」。目に借りが出来る――〈うまい表現である〉と、宇野氏は随筆集『うつくしい言葉』(講談社)に書いている◆しゃれた言い回しのなじまない寝不足もある。厚生労働省の調査によれば、福島、宮城、岩手の3県で不眠症に悩む人の割合が平均32・0%と、震災前の約5倍に増えたという◆原発事故の影響が広範囲に及んでいるせいだろう。全国平均でも震災前の約2倍、21・1%の人が不眠の症状を訴えている◆〈皆ひとの昼寝のたねや秋の月〉(貞徳)。同じ“目に借りをつくる”のでも、愛児にまとわりつかれての寝不足や、古句にあるような月を()でての寝不足ならばどんなにいいだろう。朝、重い疲労感が残る夜長の秋は何ともやりきれない。わが身ひとつの秋にはあらねど。

2011年10月18日01時28分  読売新聞)

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