HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19867 Content-Type: text/html ETag: "fc78e1-4830-9c6eed40" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 17 Oct 2011 23:21:11 GMT Date: Mon, 17 Oct 2011 23:21:06 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2011年10月18日(火)付

印刷

 発明王のエジソンが80年前のきょう没したとき、米国に功績を讃(たた)える言葉があふれた。しかし洞察の深いジャーナリストもいて、次のようなコラムが新聞に載ったそうだ▼「現代人が周囲で生じる急激な変化を十分に理解するために必要とする英知は、発明それ自体が進歩する速度に比べると、はるかに遅々とした進歩を示すにすぎない」。宇宙物理学者の池内了(さとる)さんが、かつて「アエラ」の別冊に寄せた一文から孫引きさせてもらった▼科学・技術の進歩に人間がついて行けない時代への予言である。平たく言えば、作ったけれど使いこなすには至らず、むしろ支配されてしまうような状況だろう。原子力から携帯まで、この80年を振り返れば慧眼(けいがん)に脱帽するほかない▼せんだっては、他人の行動や通話を「監視」する携帯のソフトが問題になった。携帯には便利さと表裏で干渉と束縛がついて回る。昨日(きのう)までの黒電話を思えば、電波で結ばれ合った「24時間即応社会」という点だけでも、技術の俊足は恐ろしい▼統計数理研究所が続けてきた調査では、「科学技術の発達につれて人間らしさは減る」と思う人が08年に56%いた。過去最高で、半世紀ほど前の2倍という。原発事故後はもっと増えていよう▼昔は「必要は発明の母」だった。いつしか「発明は必要の母」になったと先の文で池内さんは言う。そこで日本の原発である。必要だからあるのか、あるから必要と言われるのか。どちらが真相かを、発明王の命日に考えてみる。

PR情報