HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Sun, 16 Oct 2011 22:21:44 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:昭和二十一年の復員から三カ月。俳優の故池部良さんの映画界復…:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

 昭和二十一年の復員から三カ月。俳優の故池部良さんの映画界復帰第一作は島崎藤村の『破戒』の瀬川丑松(うしまつ)役だった。ロケ地で出た白米と鯉(こい)こくと洗い、キュウリとナスの古漬けを口にした池部さんは思わず落涙した▼「お前、めしを食ってんのに、何で泣くんだ」。阿部豊監督に問われた池部さんの答えは「軍隊での六年間、こんな美味(おい)しいお米に出会ったことがなかったんで」。この白米もロケマネージャーが、警察の目を盗んで買ってきたヤミ米だったという(『江戸っ子の倅(せがれ)』)▼日本人にとってコメは特別な作物だ。主食だから、というだけではないと思う。国民の多くが飢えに苦しんだあの戦中、戦後の記憶が、深く刻み込まれているのだろう▼実りの秋である。各地で稲刈りが進んでいるが、コメ農家は品質や収穫量よりも、放射性物質が含まれているかどうかをまず先に気にしなくてはならない。こんなにも悲しい収穫の時はない▼福島第一原発に近い地域では、作付けできなかった稲の代わりに、伸び切った雑草を刈り取っている農家もあると聞く。使わなかった農機具の手入れも怠らない人たちの姿が目に浮かぶ▼<凶年の案山子(かかし)や汝(なんじ)も手を垂らし>田中荒砂。農家にとって作物をつくることができるのに、かなわないことほど屈辱はないだろう。こんな「凶年」は今年限りに、と願わずにはいられない。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo